ニクソンインタビュー

以下は、大統領辞任後のニクソンに、ウオーターゲート事件などについて聞いたインタビューの抜粋。1977年5月にテレビ放映されたもので、英国のテレビ司会者デビッド・フロストが、ニクソンから「大統領がやることなら違法行為でも合法になる」というに等しい率直すぎる発言を引き出し、注目を集めた。映画「フロスト×ニクソン」鑑賞記念に翻訳。英ガーディアン紙のウェブサイトに掲載されたものをもとにしている。
フロスト:1970年に、米軍とベトナム軍によるカンボジア侵攻が始まったあと、反対運動が、ときに暴力的なかたちで巻き起こり、ニクソン大統領は、自らに反対する人々への諜報活動を改善する必要に迫られました。結果として、ホワイトハウスのトム・ヒューストン補佐官は、CIAやFBIその他の諜報機関の代表者たちと、複数回にわたる会議を開きました。

こうした会議で、ある計画、すなわちヒューストン計画が作られました。盗聴や侵入盗、あるいは郵便物の開封や反戦団体への侵入といった、いわゆる汚れ仕事を組織的にやろうとする計画です。こうした活動には、ヒューストン氏がニクソン氏に力説したことですが、明らかな違法行為が含まれていました。にもかかわらず、大統領は計画を承認しました。J・エドガー・フーバー(訳注:当時のFBI長官)が反対し、その5日後に計画は撤回されましたが、大統領が計画を承認したことは、大統領の権力乱用にあたるとして、後になって弾劾決議に記録されました。

フロスト:あなたがおっしゃっているのは、特定の状況、ヒューストン計画が該当するような状況では、大統領は、国その他の利益を最大化するべきで、違法行為をやると決定することができる、ということですか。

ニクソン:そう、大統領がやることなら、それは違法ではないんです。

フロスト:定義により。

ニクソン:まさに、まさにその通り。もし大統領が、たとえば、国家の安全のために何かを承認したとします。国内平和への脅威があり、それも非常に重大な規模だったと。そのとき大統領の決定は、この例だと、その任務を遂行する者に、法を犯さずに任務を遂行することを可能にするんです。そうでなければ、任務は不可能になる。

フロスト:要するに、(違法か合法かを)区別する一線は大統領の判断だ、ということですか?

ニクソン:ええ、区別する一線は、この国で大統領が無茶をして逃げている、といった印象を持たれないようにするためです。忘れてはならないのは、大統領は選挙民の前に出なければならないということです。我々はまた、大統領は議会から予算承認を得なければならない、ということも忘れてはなりません。また忘れてならないのは、たとえばCIAの秘密作戦に関わるもの、FBIの秘密作戦に関わるものは、議会の中でも信頼の厚い、極々一部の人にだけ開示されるのが、長年にわたるやり方だったのです。今日でもそれが可能かどうか、私はわかりません。

フロスト:大統領職について、あなたはこうおっしゃいました。「ある種の政府の活動は根元的に、国家の安全を守ろうとする元首によって行われるならば、合法となることは明らかです。私人によって行われた活動なら、合法ではないとしても、です」。そもそも、あなたはこのとき何を念頭にしていたんですか?

ニクソン:ええ、私がそもそも、私の頭にあったのはたぶん、我が国の戦時中に、リンカーンが私よりずっとうまく表現したことだと思います。リンカーンが言ったのは、私はほぼ正確に覚えていて引用できると思うのですが、彼はこう言ったんです。「平時なら違憲になりうるような行動でも、憲法と国家を守るために行われるなら、それは合法になりうる」。私が言っているのは、そうしたたぐいの行動のことなんです。もちろんリンカーンのケースでは、戦時における連邦の生き残りでした。国家の防衛、おそらく国家の生き残りに関わる問題なのだと、誰がわかっているでしょうか。

フロスト:でもそれは比較にならないでしょう、あなたが直面していた状況と、リンカーンが直面していたのとでは?

ニクソン:この国はベトナム戦争によって、イデオロギー的に二つに引き裂かれていました。リンカーンが大統領だった当時、南北戦争で国が引き裂かれていたのと同様に、です。いま、国が南北に分かれていないのは事実で――

フロスト:でもあなたは、ヒューストン計画についての話で、あなたはこう言いましたよね。「もし大統領が命令すれば、それは合法になる」。憲法あるいは権利章典に、大統領は国家元首以上の存在で、法を超越している、と読めるような記述があるんですか?

ニクソン:いや、ありません。憲法にはそうしたことは何も書いてありません。私はすべての言葉を隅々までくまなく読んだわけではありませんが、それでもわかっていることがあります。つまり、そうだとしても、大統領がかかわる限りにおいて、戦時に、大統領は非常に大きな権力を持つものとされてきたんです。国家と憲法を守る目的のためになされるならば、平時なら違法になる行為でも、合法なものとする権力です。国家と憲法は、私たちがずっと話しているような権利を守るためにこそ、必要なんですよ。


小宮山亮磨訳