――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 年表(日本)                                   (最終更新:1999/11/24) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――      1898年   ヘレン・バナーマン 「ちびくろサンボ」を描く      1899年12月 ロンドン・グラント・リチャーズ社より出版 ------------------------------------------------------------------------------------- 1907(明治四〇) 『東西お伽噺』(英語の教本)に「サンボーの手柄」として初めて紹介 1923 カルピスの創業者三島海雲が、会社の宣伝とヨーロッパの貧困な画家の援助         を目的に、会社の宣伝ポスターのコンテストを主催。ドイツの画家オットー・         デュンケルスビューラー(Otto Dunkel)が第3位に入賞したが、1,2位の作品は         会社のマークとしては複雑すぎて使用しにくかったため、彼のシンプルなデザ         インが採用された。1989年に廃止。 1924(大正一三) 「虎」 村山吉雄(=鈴木三重吉)翻案(『赤い鳥』一九二四年八月号) 1953(昭和二八)  「岩波の子どもの本」第1巻『ちびくろ・さんぼ』           (マクミラン版フランク・ドビアスの絵を使用。文章はオリジナルと            マクミラン版とをアレンジ) 1965 石井桃子『子どもの図書館』 「ちびくろ・さんぼ」の教訓    「ちびくろ・さんぼ」真贋論争  鳥越信VS飯沢匡(「図書新聞」)    「古典絵本の教えるもの―ちびくろさんぼ―」瀬田貞二(こどものとも月報) 1971 ちびくろ・さんぼ小論 小西正保(日本児童文学臨増・絵本) 1973 小河内芳子 ちびくろサンボの主題・思想性について(季刊子どもの本棚No.5)    渡辺茂男 「ちびくろ・さんぼ」をめぐって(子どもの館4〜6) 1974 月刊絵本12月号 特集 ちびくろさんぼ―どうみるか― 1976 大久保みどり 「ちびくろさんぼ」論―実験を中心に―(児童文学評論No.12)    名古屋「ピノキオを洗う会」 出版社に回収要求 1986 8.22 中曽根首相発言。自民党全国研修会で、「……日本はこれだけ高学歴社会になって、       相当インテリジェントなソサエティーになってきておる。アメリカなんかより、は       るかにそうだ。平均点からみたらアメリカには黒人とかプエルトリコとか、メキシ       カンとか、そういうのが相当おって、平均的にみたら非常にまだ低い」と述べる。     24 米議会のトーレス下院議員や、黒人議員連盟から抗議を受け、中曽根首相は       次のように記者団に発言。「米国は複合民族なので、教育などで手の届かない       ところもある。日本は単一民族だから手が届きやすい」。    10.21 記者団への発言に対し、ウタリ協会などから抗議を受け、中曽根首相は、       「私もマユやヒゲが濃いし、アイヌの血が相当入っている」などと発言。 1988 6月 「ワシントンポスト」紙の極東共同総局長、マーガレット・シャピロ氏が、       都内の百貨店でおもちゃのサンボを見て驚く。    7月 シャピロ氏は、都内のそごう百貨店で黒人のマネキンを見、日本初のニュースに       しようと決意する。    7.11  信濃毎日新聞       きたやまおさむ 「ちびくろ・さんぼ」について    7.18 「ワシントンポスト」がサンリオ社、ヤマトマネキン社、そごう百貨店を取材。    7.22 “Old Black Stereotypes Find New Lives in Japan; Marketers Defend        Sambo Toys,Black Mannequins, Insist Racism Was Not Intended.”    「黒人の古いステレオタイプが日本で息を吹き返す。市場関係者は差別の       意図なしと強調」という見出しで「ワシントンポスト」に掲載される。    そごう百貨店で飾られていた黒人のマネキン(ヤマトマネキン)の写真が       3段抜きで掲げられ、販売会社は、サンボ人形・マネキンを弁護し、人種主義では       ないと主張する記事が載せられた。また、「ほとんどのアメリカ人がもう何年も前に       当然の死を遂げたと思っている人種差別的な『ちび黒サンボ』が、太平洋の向こう側       で日本の玩具やビーチウェアとして復活している」と伝えた。(末尾に記事転載)   7.23 日本の各紙に「ワシントンポスト」の記事内容が伝えられる。      外務省でアメリカとの政治社会問題を担当する北米一課が行動を開始し、サンリオ      社など関係3社に、事態のもつ意味と深刻さを伝える。そごう百貨店はその日のうち      にマネキンなどを撤去する。        7.24 渡辺美智雄政調会長が自民党の軽井沢セミナーで、アメリカの黒人は破産しても      「アッケラカンのカー」だという主旨の発言をした。   7.25 前日の渡辺氏の発言を「ワシントンポスト」が報じた。サンリオ社、ヤマトマネキン      社は製品の製造中止と市場から可能なかたちでの撤去を決める。      まもなくサンリオは、自社の『ちびくろサンボ』の絶版も決める。(絶版第1号)   7.26 朝日新聞 黒人引き合いに「不用意」な発言 渡辺氏が陳謝   23日の自民党軽井沢セミナーで、渡辺美智雄政調会長が、米国の「家計の赤字」を  説明する際、「日本人だと破産は重大に考えるが、クレジットカードが盛んな向こう  (米国)の連中は、黒人だとかいっぱいいて、『家はもう破産だ明日から何も払わなく  てもいい』。それだけなんだ。ケロケロケロ、アッケラカーのカーだよ」と発言した  ことに陳謝した。 7.28 ワシントンポストに続報(末尾に記事転載) 読売新聞 米国 日本の黒人人形に反発 ブラックパワー逆なで          大使館に抗議殺到 メーカー製造中止 反日感情冷却に躍起   8.4 東京新聞 経済大国にいらだち 日本製品ボイコットも     猿谷要氏寄稿 “文化的認識”に欠ける。日米新摩擦 黒人差別騒動の裏側   8.9 朝日新聞(時時刻刻) 「黒人人形・マネキン人種差別問題の波紋」                海外で通らぬ日本の感覚 「無知は罪」と業者は反省        絵本『ちびくろサンボ』の差別論争や英米での排除の状況が報道される。   8.11 有田利二氏親子3人で「黒人差別をなくす会」を結成し、黒人を商品化した      ものを集める。(夏休みを棒にふって、数十万円をかけて収集)   8.12 抗議に対して竹下首相が返書を送る。   8.12 朝日ジャーナル      伊藤正孝   哀れちびくろさんぼ   8.16 アエラ      東郷茂彦  日米文化摩擦 チビクロサンボ人形にアメリカ人はなぜ怒るか                   「かわいい黒人」が人種差別となる社会風土     8.19 週刊朝日      景山民夫  渡辺サンよ――謝る気があるんならよ――   9月  月刊 子ども      きたやまおさむ  ちびくろ・さんぼ   10月 中央公論      東郷茂彦  “チビクロサンボ”騒動顛末記   10月 月刊 子ども      アメリカ児童文学情報  ドリトル先生“再出発”の物語   10月 諸君!      和田頴太  「ちびくろサンボ」は黒人か      10・11月 ミセス      和田頴太  知らなかったちびくろサンボ 上・下 11.8 毎日新聞(夕刊) 黒人人形「サンボ」販売中止   サンリオのサンフランシスコの現地法人は七日、屈辱的との批判が米国内で高まって  いる黒人人形サンボの販売を日本で中止したと発表した。同社は厚い唇と縮れ毛のサンボ  人形を日本で販売したが、ワシントンポスト紙が今夏、批判する記事を掲載したことを  きっかけに、米国の黒人グループが中心となり強く反発していた。 11.15 日本経済新聞 災い転じて米で信頼回復 この夏、黒人人形「サンボ」を日本で販売して米会議や黒人団体などから、 「黒人に対する偏見に満ちた人種差別だ」と抗議を受けたキャラクター商品 メーカー、サンリオ社全米黒人連盟から竹下首相に抗議書簡が届いたのをはじめ 米国内の日本大使館、総領事館には黒人団体や市民からの抗議が殺到した。サンリオ は直ちにサンボ人形の生産を中止。 1. サンリオの出版している子供雑誌「いちご」で世界の人種問題を数年がかりの連載   企画として取り上げ、各国の子供同士の文通プログラムを始める。 2. 日米間で「子供大使」事業を発足させ、来年には第一段として米国ののいろいろな   人種の子供六、七人を日本に招待する。 3. 来年から米国内でも各種団体と共催して五月五日の「子供の日」事業を展開するな   どから成る。以来、サンフランシスコ地域でそう慈善事業に寄付を続けており、昨   年は、恵まれない子供たちのためのクリスマスプレゼントとして十八万ドル相当の  おもちゃを寄付している。  黒人議員連盟議長であるダイマリー下院議員のメル・アサガイ秘書は「サンリオは 驚くほどすばやく、率直に問題解決に取り組んでくれた。他の日本企業の模範となる もので、我々も評価し、新たな友好関係ができたことをよろこんでいる」と語った。   12月 現代思想(青土社)      奥出直人  サンボとモダニズム   12.8 小学館・学習研究社・講談社が絵本『ちびくろサンボ」絶版の方針を決める。      以降、「朝日新聞」投書欄に『ちびくろサンボ』絶版をめぐっての投書が掲載され、      以後、新聞・雑誌などでとりあげられる。 12.9 朝日新聞(夕刊) 童話の古典『ちびくろサンボ』廃刊の動き相次ぐ 戦後、間もない頃から読み継がれている『ちびくろサンボ』について、大手出版社の      小学館、学習研究社、講談社の3社が、9日までに絶版にすることを決めた。 しかし、長く日本の子どもたちに親しまれた作品だけに、出版界には「文学作品としての      評価は高い」と、廃刊を疑問視する声もあり、議論が広まりそうだ。   12.10 民社党の塚本三郎氏が水戸市内の講演会で、「中南米の労働者はカス」と発言した。   12.13 岩波書店も『ちびくろサンボ』を絶版にする。 12.14 朝日新聞 岩波もサンボ絶版 戦後間もない時期からこの本を出版してきた老舗の岩波書店も13日までに絶版に することを決めた。   12.23 朝日新聞(時時刻刻)  「ちびくろサンボ」相次ぐ絶版 父母・作家ら思い複雑   12.25 出版文化情報誌 クリッパー       「ちびくろサンボ」相次ぐ絶版     12.29 毎日小学生新聞  「さんぼ」が本屋さんから消える!              朝日新聞 公共の図書館も『ちびくろサンボ』閲覧の制限を検討   12.30 週刊朝日       景山民夫  「ちびくろサンボ」のどこが悪いんだい        1989 1.5 週刊文春       清水真砂子  ついに岩波も絶版に!             “国際世論”に押し切られた『ちびくろ・さんぼ』    1.6 朝日新聞(論壇)       福島憲成 「サンボ」は黒人差別をあおるか 名作童話の安易な絶版を悲しむ    1.20 最後まで残っていた雄鶏社の『ちびくろサンボ』も絶版    1.21 朝日新聞(声)投書3件       作品の良さと差別は別問題       差別の問題は体験者の目で       大人の本こそ問題は山ほど    1.25 季刊 飛ぶ教室       上野瞭 Column-Column やれやれ    2.4  毎日新聞(夕刊・文化)       藤田みどり   黒人は、いつ「イメージの檻」から解放されるか 「ちび黒サンボ」締め出しの教えたもの ちびくろサンボの絵本やキャラクター・グッズが米国の新聞で批判されて半年       たった今、日本からもとうとうサンボは閉め出されることになり、絵本の刊行元も       廃刊を決めた。状況設定の不自然さが、更に黒人の個性を失わせる。たとえば補虜、       脱走兵無気力な夫であるといった状況が黒人を定めて特殊な人間に見せるのもしれない。      こういった立体的な黒人像が末だ成立していない日本で「ちびくろサンボ論争」が起きた      のはむしろ当然だった。    2.6  児童図書館研究会 「ちびくろさんぼ」関係資料    2,4,6,7 図書館問題研究会 大阪支部        村岡和彦  「ちびくろさんぼ」通信 N0.1〜4    2.18 朝日新聞  ちびくろサンボが引退    2.25 朝日新聞(VOICE)投書2件       否定的イメージと闘う黒人(米国学生)       「サンボ」は黒人理解妨げる(英国大学講師)    3月 創       江川紹子  『ちびくろ・さんぼ』絶版事件の示すもの    3月 名古屋大学大学院教育研究科 教育学専攻―教育論  第32号       佐藤実芳  〔研究論文〕幼児教育における人種差別意識形成の防止の研究(その1)           ―「ちびくろサンボ」の是非をめぐるイギリスの論争―    3月 話の特集       きたやまおさむ  みんなの精神科  今月のケース「ちびくろサンボ」    3月 本(講談社)       向井敏  『ちびくろ・さんぼ』の受難    3.1 月刊DIYNo.60       上野瞭  「ちびくろ・さんぼ」の溜息    3.3 内外教育       奴隷海岸、ブッシュマンに改善意見――教科書検定で文部省――    3.4 朝日新聞(夕刊・ウイークエンド経済)       辻信太郎  ちびくろ・さんぼ批判の米世論が一転 継続的事前活動実る      3.6 浅野剛弘氏が「日本図書館協会、図書館の自由に関する調査委員会」宛て、       京都市中央図書館の『ちびくろサンボ』に対する対応を調査するよう依頼する       手紙を送る。    3.23 「図書館の自由に関する調査委員会」が上記の調査を行なう。京都市中央図書館       の対応者は図書課長の尾上喜代史氏。   4月  部落解放 第292号       有田利二 黒人差別商品と絵本「ちびくろさんぼ」絶版のとりくみ           「黒人差別をなくす会」の小さな試み   4月  季刊 子どもと本 37      「ちびくろ・さんぼ」が絶版になった!   4.23  朝日新聞(読書)       論議続く「ちびくろサンボ」 独自出版の動きも 4.24 毎日新聞(夕刊) 童話集に障害者差別表現、小学館絶版、回収      小学館発行の『お話童話宝玉選』、『日本童話宝玉選』、『世界童話宝玉選』      に、「全国障害者解放運動連絡会議」は障害者に対する差別表現があるとして      小学館に抗議した。小学館では、1989年2月22日付けで全障連に釈明文を送付す      るとともに同シリーズを絶版とすることに決め、全国の書店に販売の中止を求めた。      (図書館長宛てには同年6月1日付けで依頼文が送られたが、回収ではなく、検討      のうえ適宜な措置をとることを求めている)   4.25  こどもの図書館  vol.36 No.4 (児童図書館研究会)       特集「ちびくろさんぼ」学習会報告   4.27 「ちびくろサンボ」問題を考える シンポジウム 都立中央図書館にて       日本図書館協会、図書館の自由に関する調査研究会、児童図書館研究会 共済            4.30  朝日新聞       「サンボ」と図書館の役割   5月  自然と人間を結ぶ(農文協)       石川憲彦  「チビクロサンボ」を消し去るまえに 5.9 朝日新聞 「サンボ」の原書輸入中止 洋書輸入のオークブックセラーズが、8日までに「サンボ」の原書である『The story of   little black sambo』の輸入中止を決めた。   6月  子どもと読書 No.214 「ちびくろさんぼ」問題を考える 6.4 朝日新聞  公共図書館の対応に差 「ちびくろサンボ」その後 利用者から請求があった場合の対応については違いが見られる。利用目的を聞いて      研究のためであれば提供するという。ある本が差別的であるかどうかを公権力の一つ      である公共図書館が判断し排除するのは危険。差別的との見方があることや本の歴史 的背景についての資料を備えた上で判断は利用者にゆだねるべきだ。   6.7 毎日(朝日?)新聞(記者の目) “差別”で消えた「ちびくろサンボ」 背後にことなかれ主義? 「ちびくろサンボ」に図書館で二十数年ぶりに再会した。昔の記憶そのままの愛らしい 挿絵。しかしなんだかむなしい気持ちになってしまった。この本だけでなく、すべての 「サンボ」が絶版になり、もう書店でみられない。「サンボ」に対する黒人の思いに 近づくには、時間がかかるはずだ。じっくり考えるまもなく、日本人の差別への薄い認識 を非難したアメリカに対する国際問題としてのみ対処されてしまった気がする。 6.20 日本経済新聞 「鐘」より 母親たちや教師、児童図書関係者には絶版に疑問を抱く人が多い。そんな中で 「子供文庫の会」代表の山本まつよさんが近く「ブラック・サンボくん」を出版する。 しかし、母親たちにしてみれば、かつての良書がある突然、姿を消してしまうのは納得 できない。山本さんも新訳はタイトルも変え、訳の原著に忠実にした。   7月 図書館雑誌 (日本図書館協会)      武清  「ちびくろサンボ」と図書館の問題          「ちびくろサンボ」をめぐる論議を読む――シンポジウムの成果を素材に   7.11 朝日新聞(夕刊)      「初恋の味」の決断  やめます「黒人」マーク(カルピス) 7.16 朝日新聞 「とびら」より  情報がほしい 絶版で、品切れ 消してしまう本について事前に情報を送るのは読者への最低限の礼儀、責任ではない だろうか。PR誌などの一部は割くだけでいい。それがあれば図書館にも対処の仕方が あろうというもの。   7.17 シンポジウム「『ちびくろサンボ』はどこへいったの?」が子どもの本の明日を      考える会主催で開かれる。  7.18 朝日新聞 差別に鈍感すぎる日本社会 日本の社会は、ことのほか「女は・・・」、「黒人は・・・」と区別することが大好き である。我々は日常生活の中で「女のくせに」、「年寄りのくせに」などという表現で 無神経に使われているのをよく耳にする。差別に対する日本社会の鈍感さを猛省すべき 時がきている。      7.19 日本経済新聞  ダッコちゃん姿消す 昭和30年代半ば大流行したタカラのビニール人形「ダッコちゃん」の登録商標の使用を 来年4月に取りやめる。「ダッコちゃん」の出荷製造を停止しており、今回の措置で 「ダッコちゃん」は完全に姿を消す事になる。同社では「ダッコちゃんは黒人ではない。 夏に日焼けして真っ黒になった日本人の少年をモチーフに商品化した。黒人差別とは全く 関係がない」と言っている。ただ、今回の商標の使用中止には誤解を招いて余計な波風を たてたくないという思惑もあるようだ。 7.20  読売新聞(夕刊)  人気キャラクター相次ぎ使用中止 人種差別助長する? 「人種差別を連想させ一部の人に不快感を与える」との理由で黒人や真っ黒に日焼け     した子供などをデザインしたマークやキャラクター商品の使品の使用中止や製造を     取りやめる企業が相次いでいる。昭和三十五年に半年間で二百四十万個売った爆発的な     ヒット商品のビニール人形「ダッコちゃん」をマーク化したもので商品パッケージや     名刺、封筒などに使用してきた。マークの使用中止に踏み切ったことにつき「もともと     真っ黒に日焼けした日本人の少年をモチーフに作ったもので人種差別論議とは直接関係     ないが、これも時代の流れ」としている。1924年(大正13年)から黒人がカルピスを     飲んでいるマークを包装紙やラベルに使ってきたカルピス食品工業は海外を中心に人種     差別論議が高まってきたため、このほど来年一月の市場出荷分から使用を中止すること     を決めた。同社はアメリカなど海外向け商品への使用は輸出を開始した十年前から中止     していた。このほか、キャラクター商品最大手のサンリオは、昨年の七月、ビーチ用品     など夏向け商品のキャラクター「サンボ&ハンナ」の使用を中止している。米国紙が    「黒人べっ視につながる」と批判したため、即座に使用中止したという。   7.23 朝日新聞 大阪版      絶版の後どうする 東京でシンポ      7.24 毎日新聞      差別は「サンボ」だけではない      「ちびくろ問題」シンポジウム 女性や障害者問題にも、もっと敏感に   7.29 読売新聞(夕刊) 西洋の差別観そのまま 日本人の黒人イメージを探る      ジョン・ゴードン・ラッセル      いま、日本の小説や新聞、テレビなど映像の中などで黒人のイメージがどのように      猫写されているかを調べています、小説の世界ではどんなイメージですか。ちょっと      むかしの50年代の黒人の生活のような感じです。いまのふつうの黒人の生活と違う。      しかし、黒人に対して、シンパシーが感じられます。黒人に対する侮辱発言が問題に     なった。日本の政治が黒人に対する差別発言をしたときアメリカの新聞、雑誌はあのよ     うな発言は当たり前といった評価をしましたがこの裏には、「日本は差別の国だから、     本音をいったに過ぎない。」という反感がある。「チビクロサンボ」が本音から消えた。     アメリカでも黒人を差別するような本が消えていってます。黒人のイメージは、いろい     ろあるんです。だからサンボの本が図書館にあってもいい。しかし、他の黒人に関する     本も読んでください。そして何故「サンボ」を黒人がいやがということを、こどもたち     に教えてほしいです。   8.10から2週間  「黒人差別をなくす会」の家族3名が「黒人企業協議会(BBC)」      より招待されて訪米した。「差別をなくすチャンピオン」と賞賛される。   8.14 日本経済新聞 ちび黒サンボの曲、音楽教材からはずす      ヤマハはこのほど幼児向け音楽教材を見直し、黒人の男の子が主人公の     「いたずらちび黒サンボ」の曲を秋開講の教材から取りやめることを決めたこれまでに      全国で約二十万人の幼児が学習したとみられる。ヤマハでは「同名の絵本を読んで感動      を基に音楽を通じて自己表現したもので、人種差別とは全く関係がない」としているか      ら今回は「人道的見地からテキストの内容を見直した」と説明している。   8.21 毎日新聞 大阪版(今どきの図書館7)      「サンボ」の波紋  対応が問われている絶版……“追放”の動き     8.30 全国婦人新聞  人気絵本の絶版は何故か             「子どもの本の明日を考える」シンポジウム開く   8.31 『ブラック・サンボくん』発行  子ども文庫の会      「ちびくろサンボ」一斉絶版事件のあと、はじめての出版。   9.12 朝日新聞(論壇)      図書館は「サンボ」自由提供に      絶版支持するが、知る権利に配慮も   9.18 朝日新聞    新たに出版「サンボくん」   子供が本好きになる上で欠くことのできない重要な本だったのです。「この本で描いて      いるのはインドの少年サンボ。アメリカで起こった反黒人差別運動とは関係ありません。」   10月 「黒人差別をなくす会」が、取次店や一般大手書店に対して『ブラック・サンボくん』      を取り扱わないよう要請する文書を送る。   10.8 毎日新聞 大阪版      「ちびくろサンボ」図書館へも波紋      名作の「差別表現」めぐり対応を暗中模索  貸し出し禁止、閲覧制限も   10.26 図書館大会 2日目(宮崎市にて)      第9分科会「図書館の自由とこれを支える職員をめぐる課題」で議論        11月 『ブラック・サンボくん』の発行代表山本まつよ氏のところへ、「黒人差別をなくす      会」の有田太書記長(当時10歳)から、配達・内容証明つき郵便で、回答期限指定の      抗議文が送られてくる。   11.30 読売新聞(夕刊)     ジェリー・ヨコタ  ちびくろサンボの危険性       歴史を教えずに子供に無知の刃  奴隷時代の遺物が定着 1990   1月 教育  No.517 佐藤実芳  「ちびくろサンボ」と人権           ―その歴史的背景とイギリスにおける議論より―   2月 アフリカ民族会議(ANC)から、『ブラック・サンボくん』の発行中止要請の      手紙が山本まつよ氏に送られてくる。     『「ちびくろ・さんぼ」はどこへいったの?』(子どもの本の明日を考える会)      発行。   3.14 記録      シンポジウム「ちびくろ・さんぼ」を考える  主催:豊中市立図書館   4月 「焚書されてはならないが、公開されてはならない“ちびくろサンボ”の理由      パート2」の集会が大阪で開かれる。   4.22 朝日新聞 なお続く「サンボ」論議 「サンボ」が差別かどうか私はいえないが黒人にとって差別そのものだ。「差別撤廃     という目的は正しくても、どんな方法でもいいということにはならないのではないか。     黒人差別の歴史は理解するが、著者に侮辱の意志がない場合、結果的に差別と受け止め     る人がていも、それは出版の自由に含まざるをえないと思う。」   4.24 毎日新聞 黒人差別知ろう  「サンボ」を考える集会(大阪) 5.5 東京新聞  人種差別か文学価値か      日野市立中央図書館では、人種差別だとして問題になった子どもの絵本『ちびくろ      サンボ』について、「サンボ」の是非論争などをまとめた資料集をつくり、市内八つ      の図書館において、この問題についての市民の議論を呼びかけている。     これまでにも、市民団体や図書館関係者らの論議は多くみられるが、「自治体が資料      を作って市民に提供し、議論を呼びかけている」のは、都内では初めてのケースである。   5.9 朝日新聞   黒人問題のビデオ アフリカン・アメリカン(黒人)への差別意識をなくすためにビデオテープ3000本を      高校や市民団体に無料配布することを決めた。   8月 『「ちびくろサンボ」絶版を考える』(径書房)発行。 9.21 海部内閣の梶山静六法相は記者会見で、「(アジア人女性が)あそこに立っているので、     善良な今までの移住者に評判が悪い」「たとえば、悪貨が良貨を駆逐するというが、     アメリカにクロ(黒人)がはいって、シロ(白人)が追い出されるというように、     混沌地になっている……」と述べる。     梶山法相は同日夕方「人種差別として行ったつもりはまったくない」と説明。  22 朝日新聞 「良貨を駆逐する混住地」新宿の繁華街 梶山法相が差別発言 梶山首相は21日午前の閣議後の記者会見で、東京・新宿区内の繁華街が東南アジア系     など外国人による売春地帯となっていると説明したうえで、「『悪貨が良貨を駆逐する』     というか、アメリカに黒が入ってきて白が追い出される、というように新宿が混住地に     なっている」と人種差別とも受け取れる発言をした。 24 ニューヨーク州議員議員ジェラルディン・ダニエルス(セントラル・ハーレム選出、     民主党)、米国内の黒人に対し、あらゆる日本製品のボイコットを呼びかける。  25 梶山法相、閣議後の記者会見で、21日の発言を取り消し陳謝。     「アメリカの人種問題を援用したのは、まったく不適切であったので、その発言を     取り消すとともに、関係者の皆様に深くおわびします」。     坂本官房長官は、梶山法相の取り消し・陳謝で問題処理はすんだという見解を示し、     米国などにはとくに釈明しないとの考えを表明した。     チャールズ・ヘイズ米下院議員(黒人議員連盟、民主党)米下院本会議で発言。     (中曽根・渡辺発言をもとりあげ)「アフリカ系米国民は売春婦と関係があり、文盲で、     金銭にだらしないというのだ。日本政府がどう説明しようと、〔差別は〕誤解の余地は     ない」(このころから、米国の日本大使館などには連日抗議の電話・手紙・デモが     来るようになる)。  27 部落解放第24回研究集会で、梶山法相追及会議。   28 全米黒人地位向上協会(NAACP)などがワシントンの日本大使館に対して、     梶山発言に抗議のデモ。     訪米中の海部首相、米CBSテレビのインタビューにこたえ、梶山発言について陳謝。     「極めて不適切であり残念なことだ。法相には厳しく注意をした」「マイノリティ問題     に対する正しい認識を日本国内に根づかせるための努力を政府が先頭に立ち、啓蒙して     いかねばならない」 10.2 日本アフロアメリカン友好協会(JAFA)の呼びかけで、在日米人や日本人約30人が     日本の法務省前で梶山発言抗議のデモ。   3 セネガル、リベリア、マダガスカル、ナイジェリア、エチオピア、アルジェリアの     アフリカ6カ国の大使が外務省を訪れ梶山発言に正式に抗議。中山外相に抗議書簡提出。     梶山法相が参議院決算委員会で人種差別発言について改めて陳謝。しかし「『悪貨』     という表現は売春という行為、不法滞在者であるということを指したもの」と釈明。         米下院の黒人議員連盟(CBC)所属の24議員、海部首相の謝罪と梶山法相の辞任を     求める決議案を提出。  5 全米黒人地位向上協会は梶山発言に対する海部首相の正式な謝罪と、梶山法相の辞任を     要求。あわせて、在米日本企業の黒人雇用促進、日本の大学でのアフリカ系米国人の     文化・歴史研究講座開設などを要求。     全米黒人地位向上協会、韓国系米人連合、日系人戦時収容補償要求全米連合(NCRR)     の3団体は荒船清彦ロサンゼルス総領事を訪ね、梶山発言に抗議。   9 ニュージャージー州トレントン市(ダグラス・パルマー市長)が、梶山発言を理由に、     東京都議会の「都市問題調査団」の受け入れを拒絶。「……〔梶山〕法相は発言の中    でアメリカの黒人を引き合いに出して、地域を汚す売春婦と比較した。黒人を市長に    持ち、多くの黒人を含む多人種からなるトレントン市にとって、法相の発言は許すことが    できない。……今回の事件が単発の事件ならまだこのような措置を取らずにすんだのだが、    今回の法相発言は、中曽根首相(当時)の人種差別発言と同種のものであると考える。    中曽根も法相とおなじように発言の撤回も謝罪もしていない。……」   11 黒人議員連盟のダーマリー下院議員(カリフォルニア州、民主党)ら5名は、村田     駐米大使に、3日提出の決議案の内容を話す。     朝日新聞 法相の差別発言で都議団の訪問 米市長が断る 「人種差別」と問題になった梶山法相の発言に対し、アメリカニュージャージー州の     州都トレントン市の黒人市長が怒り、近く同市を訪問する予定だった東京都議会議員     の「都市問題調査団」の受け入れを断ってきたことが10日明らかになった。   朝日新聞(夕刊) 人種発言改めて問う陳謝 梶山法相は11日午前の臨時閣議後、海部首相に会い、東京・新宿の外国人売春による      環境問題を米国での黒人進出になぞられた発言に対し、米国内などから反発が続いて      いることについて「ご迷惑をおかけしている」と改めて陳謝した。   12 東京都議会都市問題調査団、ニュージャージー州への公式訪問中止を正式に決定。     梶山法相は記者会見で再度の釈明の意志を問われ、「私はここ〔法務省記者クラブ〕で     発言したこと〔人種差別発言のこと〕で、この場所で発言を取り消して関係者におわび     をもうしあげた。その意が伝わるかどうかは方法論の問題だと思う」と述べた。     海部首相は梶山発言に対する米の反応について、「〔法相の〕発言は不適切で、本人に     厳重に注意した。本人も重々反省し謝ったし、〔米側の〕理解は得られていると思う」     「米国のマイノリティ(少数民族)に対する正しい認識を広めるため、啓発活動をして     いかないといけない」などと述べた。     外務省の渡辺外務報道官は梶山発言について、「他国の国民や社会に対する理解の欠如     から生じている以上、真剣に受けとめている」「政府としては、マイノリティの代表ら     といっしょに、わが国の国民意識の向上に努めていきたい」と述べた。   朝日新聞(夕刊)梶山法相の辞任要求 米下院に決議案提出 東京・新宿区内の外国人売春婦の増加を、米国社会での黒人の進出に例えた梶山法相     の発言について、米下院の黒人議員連盟【デラムス会長、民主】所属の二四議員が     連名で、ブッシュ大統領に対し海部首相の謝罪と法相の辞任を要求するよう求める     決議案を提出していたことが、11日明らかになった。今回の決議案は今月3日に正式に     提出されたもので、この中曽根発言や88年の渡辺美智雄自民党政調会長【当時】による     米国黒人の経済観念に関する差別発言などを改めて例にあげながら、度重なるこの種の     発言は「日本政府に固有の、根の深い人種差別の明確なあかしである」と指摘。   13 毎日新聞社説「国際感覚なき法相の放言」   朝日新聞 梶山法相の黒人差別発言「不快感与え、遺憾」   海部首相は十二日、東京・新宿の外国人売春婦の倍加を米国での黒人進出にかぞられた     梶山法相発言が米下院への法相辞任要求決議案の提出にまで発展していることについて、     「米国側に不快感を与え、誠に遺憾だ」と表明するとともに、「法相の発言は不適当で、     本人に厳重に注意した。本人もたびたび反省し謝ったし、米国側の理解は得られている     と思う」と述べ、政府内での一連の措置によって事態の収拾を図りたい考えを示した。   14 朝日新聞社説「梶山発言を考える」   16 海部首相は衆議院本会議で、梶山発言について、「きわめて不適切で遺憾だ。私からも    厳重に注意し、法相も深く反省し発言を取り消し、アマコスト駐日米大使にも謝罪した。     多くの方に不快感を抱かせ、迷惑をかけたことに心を痛めている」と述べた。     梶山法相、米黒人議員連盟に「おわびの手紙」を出すことを決める。  17 浜本万三参議院国会対策委員長(社会党)は参議院本会議で、梶山発言について、     「日本の政治に対する世界の信頼を回復するためにも、首相の責任でけじめを      つけるべきだ」と追求した。     梶山法相、陳謝文をロナルド・デラムス米黒人議員連盟会長(カリフォルニア選出、     民主党)に渡す。「……今回の私の発言は、人種差別意識に基づくものでは全くあり     ませんが、誤っており、はなはだ不適切なものでありました。……」       海部首相、全米黒人地位向上協会に陳謝書簡を送る。「……いかなる人種差別も正当化     できない。梶山発言は不適切であり、私から厳重に注意し、本人も陳謝し発言を取り消     した。日本人は米国での人種差別克服の努力を理解すべきであり、早急に対策を講ずる     ……」。     デラムス議員は海部書簡を評価しつつも梶山罷免決議案取り下げはせず。   18 ネルソン・マンデラ歓迎日本委員会(呼びかけ人代表・木川田一郎日本聖公会首座主教)     が梶山法相罷免要求決議を採択。     米下院が梶山法相非難決議を全会一致で決議(辞任要求は通らず)。併せて、海部首相     に対し、多民族社会への理解をうながすための教育計画の実施と政府部内での人種差別     的姿勢を根絶する措置をとるよう要求。   19 坂本官房長官は閣議の後、「米国のマイノリティー問題に対する認識を国内に根づかせる     よう啓発の努力をしたい」として少数民族問題について、政府が今後、啓発活動に     とりくんでいく意向を重ねて表明した。     法務省は「マイノリティー問題に対する強力な啓発活動」を要請する異例の人権擁護局     通達を全国法務局(8カ所)と地方法務局に出した。また米国のマイノリティー問題の     歴史を記録した啓発ビデオ『勝利を見すえて』を配付することをはじめた。     自民党の佐藤孝行幹事長代理(渡辺派)は党役員会で、梶山法相発言への政府・自民党の     対応などについての外交姿勢に不満を表明し、「米国の反発を和らげるため、党はマイノ     リティ問題等議員懇談会の代表派遣を予定しているようだが、海部首相も法相も陳謝して     いるのに、いつまでやっているのか」などと述べた。   20 海部首相は梶山発言問題にからんで、米ホワイトハウスのフィッツウォーター報道官が、     先月末の日米首脳会談の際にブッシュ大統領が「深い懸念を表明した」と語ったことに     ついて、「大統領と(の会談で)は話題にならなかった。何かの間違いじゃないのか」     と述べ、全面的に否定した。  21 長野県篠ノ井市民会館で、教育アニメセンター主催による名作アニメ映画会が計画     されたが、その中に「ちびくろサンボ」が含まれており、部落解放同盟長野市協議会     が上映に異議をとなえ、ちがうアニメに変えて開催された。     清泉女学院短期大学の文化祭で、児童文学クラブ(文化祭のために組織された)が     「ちびくろサンボ」の人形劇講演を計画していたが、部落解放同盟長野市協議会の     問い合わせにより変更し、「アンパンマン」に変えて公演した。  24 部落解放同盟長野市協議会が長野市長および長野市教育委員会に、    「ちびくろサンボ」の問題点を指摘する「人種差別撤廃にむけての申し入れ書」を提出した。    米下院の黒人議員連盟は日本側に誠意がないとして、先に外交委員会が採択した法相     罷免決議案をとりさげ、法相辞任要求をもりこんだより強い決議案を再提出。     日本アフロアメリカン友好協会は東京都内で部落解放同盟中央本部・反外登法運動関東     連絡協議会・日本キリスト教婦人矯風会女性の家HELPの国内3団体と合同で記者会見     し、梶山法相の辞任、人権意識を向上させるための教育、法制度の改革を政府に求め、     合同で運動していくことを明らかにした。 25 朝日新聞 当面、制裁継続の訴え 日本は、黒人側からは「アパルトヘイト体制を支える最大の貿易国の一つ」として     南ア政府からは「先進国で唯一人的交流も認めない国」として疎まれてきた。その     日本に、2500万黒人の代表マンデラ氏を「未来の大統領」として迎える。改革のもう     一方の指導者でクラーク大統領を招き、意見を交わす時がきたのではないか。   31 長野市教育委員会が「冬季オリンピック招致に向け、国際都市を目指している     長野市は、人種差別撤廃への取り組みを早急に確立する必要がある」として、     市内66の小中学校や市立高校、公民館、市立図書館に「依頼文」と「別記」を     通達し、「ちびくろサンボ」の廃棄と学校や地域での「ちびくろサンボ」を     題材にした人形劇の上演もおこなわない指導をするよう依頼した。この内容は     24日の解放同盟からの「申し入れ書」をほとんどそのまま引き写したものであった。  11.2 長野市立保育園に、児童福祉課長名で「ちびくろサンボの廃棄について(依頼)」     という文書と、「別記」(31日の各学校向けの文書と同じ)を出し 施設内の     「ちびくろサンボ」の廃棄、紙芝居や絵本、おもちゃなどを11月15日までに児童     福祉課に「回収」「返送」するよう求め、各家庭にも「廃棄処分」の指導をする     よう依頼した。  11.9 私立の保育園・幼稚園に対し、長野市長(塚田 佐)名で、2日の市立保育園     宛てに出したのとほぼ同じ内容の依頼書と別記を出した。  11.15 法務省のマイノリティー問題の特別啓発用ポスターに、アフリカ系米国人を含む子供     たちを写した写真が採用されることが決まった。戦後40数年も続いてきた同省の人権     擁護、差別撤廃の啓発活動の中でも「アフリカ系米国人が登場するポスターは初めて」     (同省人権擁護局)        信濃毎日新聞 差別論議の「ちびくろサンボ」 長野市が廃棄“指導”            学校や課程に「五輪招致に不適切」        中日新聞  童話「ちびくろサンボ」「廃棄・焼却を」           長野市が学校、家庭に“指導” 五輪招致にらむ         毎日新聞(夕刊) 長野市「ちびくろサンボ」の絵本 個人の所有物まで廃棄指導            読売新聞(夕刊)  「サンボ人形、本捨てよ」 五輪誘致の長野市               “指導”に父母ら反発      朝日新聞(夕刊) 「ちびくろサンボ」廃棄を 冬季五輪招致絡み 長野市、家庭に依頼      「ちびくろサンボ」は廃棄を決め、『「ちびくろサンボ」絶版を考える』は開架から      引き揚げることを決めた。これに対し、同書を編集した径書房の出倉純さんは     「信じられない。これではサンボついて考えることさえだめだ、ということに      なってしまう」と批判している。   16 朝日新聞 「ちびくろサンボ」廃棄 関連図書の制限 「ちびくろサンボ」廃棄を長野市が市内の学校や家庭で廃棄処分するよう依頼の通知      を出していたことが15日までにわかった。同市は1998年冬季五輪招致に向け国際都市      づくりを目指しており、人権差別廃棄への取り組みを示したというが、市民からは      「行政が家庭内の書物にまで口出しするのは行き過ぎでは」との声が出ている。   17 名古屋市で開催された第19回部落問題全国研究集会での記念講演で、奥平康弘氏     (国際基督教大学教授・憲法学者)が、長野市の措置を「われわれ(憲法学者)の     立場からいうとまことに残念だ。持っていること、読むことまでダメとなる。納得     いかない感じがする」と批判した。(『赤旗』11.18)   18 信濃毎日新聞 「ちびくろサンボ」廃棄問題 図書館分かれる対応   21 日本共産党長水地区委員会と日本共産党長野市会議員団が、「ちびくろサンボ」の      廃棄について、長野市教育委員会にたいして、「言論・表現の自由をふみにじるもの」     だとして申し入れをした。 25 図書館問題研究会、第17回理論集会に全国から80人が集まり、「ちびくろサンボ」の     絶版・廃棄問題について討議し、「長野市における『ちびくろサンボ』廃棄依頼問題     にたいするアピール」を採択した。   26 全国の公共図書館職員等でつくる図書館問題研究会(松岡要会長、会員1800人)は     長野市の措置について、抗議のアピールを採択した。アピールによると「ちびくろ     サンボ」を題材とした絵本や紙芝居の一方的廃棄は、「人権差別撤廃につながるどころ     か、問題の本質を隠蔽するものにほかならない」としたうえで、「資料を公開してこそ     問題解決につながる」と強調している。   27 朝日新聞  公共図書館職員らの会 「サンボ廃棄」に抗議のアピール     毎日新聞(長野) 長野市の「ちびくろサンボ」廃棄依頼 広まる撤回求める声           「かえって問題の本質隠すことに」     28 全国部落解放運動連合会長野市協議会が、長野市長に、今回の措置は「問題の解決に      ならず」「『言論、出版、表現の自由』を侵す」ものだとして「今回の措置の撤回」を      申し入れる文書を提出した。      30 朝日新聞(論壇)     原田奈翁雄(径書房代表) 事実を曲げた「廃刊」の経緯  「ちびくろサンボ」廃棄     指導は問題  焚書の恐ろしさ、効率図書館の姿勢を問題にしたが、部落解放同盟の     「申し入れ書」については触れなかった。 12.1 長野市は「指導方法に行き過ぎがあった」として通達の一部を撤回すると発表した。     しかし「ちびくろサンボは差別を持ったものととらえていることに変わりはない」とし、     今後は教育機関などで差別をなくそうという目的のためにのみ使用・閲覧させることと     した。     朝日新聞「声」欄に「私も聞いた外国人をめぐるデマ」という投書が掲載された。     「埼玉県や千葉県の一部で、外国人をめぐるデマが広がったという記事を読んで、驚き     と憤りでいっぱいになった。私は東京の足立区に住んでいるが、実は一〇日ほど前に     全く同じような話を聞いたのである。『数人の黒人グループが女性に乱暴する事件が     起きている』『年とった女性も被害にあっている』というものであった。話がいかにも     リアルであったため、全くのデマとは見ぬくことができなかった。(略)」 12.2 朝日新聞 「サンボ廃棄」を撤回  長野市「指導行き過ぎた」 (長野市) 「指導方法に行き過ぎがあった」として依頼を撤回することを決めた。しかし、     「ちび黒サンボは差別性を持ったものととらえていることにかわりはない」としている。     市立長野図書館は、書架からはずしたうえ検索用コンピュータの端末からも削除していた     「ちびくろサンボ」の絵本など数冊を再入力、研究用に閲覧できるようにし、書架から     はずしていた『「ちびくろサンボ」絶版を考える』は書架に戻すことを決めた。    3 図書館問題研究会の松岡要委員長らが長野市に抗議をし、「行政が差別図書と判断し、     市民にアピールするのは問題」と一連の方針の白紙撤回をもとめる文書を長野市教育     委員会に提出した。     長野市教育委員会教育長名で図書館長宛て、一部撤回通知が出された。  4 石川六郎会頭を団長とする日本商工会議所の訪米団はワシントンで全米黒人地位向上協会     と会談し、梶山発言をきっかけに同協会から提示されていた在米日本企業の黒人雇用改善     問題や日米の相互理解について話しあった。その結果、日商内に、同協会との連絡窓口を     近く設置することになった。   6 中日新聞    5日の長野市議会一般質問で、野々村博美氏と藤沢敏明氏が「ちびくろサンボ」廃棄指導 問題をとりあげ、奥村秀雄市教育長は「図書は今後とも差別図書として市民に啓発してい きたい」と応えた。  8 12月4日から10日までの「人権週間」の催しのひとつとして、東京・銀座の数寄屋橋公園で、     梶山発言に抗議する24時間座り込みとデモが行なわれた。この行動は部落解放同盟や日本     アフロアメリカン友好協会の呼びかけにより行われたもので、「責任をとること」「偏見・     差別をなくす啓発・教育」を要求し、数寄屋橋公園では常時30〜40人の人が集まり、座り     こみやビラ配り、署名集めや集会を行なった。     朝日新聞  先走り行政  論議は不十分  長野市の「ちびくろサンボ」廃棄依頼     朝日新聞(長野版)  「名作物語」から取り除きを検討          信濃教育出版部の「信濃文庫」「侮蔑である以上当然問題にする」   10 朝日新聞西部本社版によると、絵本「ちびくろサンボ」の扱いについて、九州・山口・     沖縄の大半の図書館は貸し出しをつづけており、その理由として「資料の請求にこたえる     のが図書館の役割」(福岡市立)、「利用者の判断に任せる」(熊本市立)、「禁止する     ほどの内容ではない」(沖縄県立)、「児童ものの古典」(山口、鹿児島県立)など。     だが、長崎県立、大分市民、佐賀県立の各図書館など直接子供たちの目に触れる所から     移したところも多い。宮崎県立図書館では小学生以下の貸し出しを禁止、「差別用語が     入っている」と説明したうえで渡している。     信濃毎日新聞  「表現の自由」認識甘さ  長野市の「ちびくろサンボ」問題   11 毎日新聞の松本照雄ニューヨーク特派員によると、黒人市長としては初のディンキンズ・     ニューヨーク市長は、同記者との会見のなかで、梶山発言について「偏見とまったくの      無知によるもので、移民国家でない日本は他民族への対応を知らないから、という弁解は     偏見による事実を覆い隠すものだ」と非難した。     12 訪米中の自民党少数民族問題懇談会の森喜朗会長代理らは、フックス全米黒人地位向上     協会専務理事らと会見し、梶山発言について改めて陳謝した。   13 衆議院第一議員会館内で、部落解放同盟など反差別・人権擁護グループによる集会が     行なわれ、梶山法相の辞任などを求める声明を採択。集会には在日黒人組織のメンバー     も参加した。   21 朝日新聞(夕刊)     広島市内の繁華街に11月1日から飾られていた高さ6メートルの黒人サンタクロース人形に     対して、「黒人を差別するものだ」との非難の声があがり、広島市国際交流課も「差別に     つながりかねない」として指導、この日までに、色を“肌色”に塗りかえたり、分厚い     唇にヒゲをはやすなど、黒人色を薄める手直しをした。   25 長野県高等学校教職員組合および長野県教育文化会議図書館教育研究会が、一連の措置に     対して長野市長等に抗議文書。   29 第二次海部内閣の発足により、法相は梶山から佐藤恵に替わった。 1991   1.14 長野県人権共闘会議と憲法会議の主催でシンポジウム「“ちびくろサンボ”問題      を考えるつどい」が開催された。   1.24 日本図書館協会、図書館の自由に関する調査研究委員会、図書館問題研究会、      児童図書館研究会、親子読書・地域文庫全国連絡会の主催で、「長野市の      『ちびくろサンボ』焚書を問う」集会が、東京都中野区勤労福祉会館で開催された。      図書館員ら約100人が参加し、「市民の自由な読書を保障するために、長野市に      『ちびくろサンボ』の検閲行為の撤回を要求します」(集会決議)がなされた。   1.25 長野人権共闘会議が長野市長と教育長に、依頼文書の全面撤回と図書館の自主性を      確立するための措置などを求める申し入れを出した。   2.21 長野市長と長野市教育委員長がそれぞれ長野県人権共闘会議議長へ回答を提出。      両者とも、「12月1日示した見解のとおり」として、変更を認めず。 1997 11 『おしゃれなサムとバタ−になったトラ』日本語訳出版 1998 10  『トラのバタ−のパンケ−キ ババジくんのおはなし』日本語訳出版 1999 5.20 『ちびくろさんぼのおはなし』国内初めてのヘレン・バナーマンのイラストを      復刻(初版第二版)した忠実な翻訳本が径書房より出版。灘本昌久訳   10 ウェブサイト「ちびくろさんぼのちいさいおうち」スタート(^_^)v   10  『The Story of Little Black Sambo』原著の復刻版(英文)径書房より出版 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――   Old Black Stereotypes Find New Lives in Japan; Marketers Defend Sambo Toys, Black Mannequins, Insist Racism Was Not Intended. The Washington Post, July 22, 1988, By: Margaret Shapiro, Washington Post Foreign Service Section: A SECTION, p. a18 Story Type: News Foreign Line Count: 60 Word Count: 669 TOKYO - *Little* *Black* *Sambo* , the racist caricature that most Americans thought had died a well-deserved death years ago, has been resurrected across the Pacific as the mascot of a hot-selling line of Japanese toys and beachwear. Sambo and other stereotypical depictions of blacks--some with grotesquely fat lips and ethnic dialect--have become something of a fad here this summer in what appears to be an attempt at internationalization gone gravely awry. The marketers of the products say that no affront to blacks is intended. "Nobody in Japan regards this as racist," said Kenichiro Ide, spokesman for Sanrio Co., which puts out the Sambo line. Instead, he said, it should be seen as "humorous" and "friendly." Japanese consumers, he said, "enjoy it with good will." Among the items put out by Sanrio is a beach cloth featuring Sambo and his sister, Hanna, both with very black faces and round, white eyes. Under Sambo is written: "When I'm hungry there's no stoppin' me. I'll be up a palm pickin' coconuts before you can count to three. (An' I can count way past three, too!)" Despite the recent trend toward global travel and overseas investment, the Japanese remain a strongly insular people, with little understanding of or empathy for foreign cultures. As a result, many Japanese embrace timeworn, often offensive images of people who are not like them. For instance, anti-Semitic books continue to be bestsellers, and people here often explain the books' appeal by saying that Japanese are merely interested in the fact that Jews are good at making money. In the case of blacks, many Japanese appear to assume they are all good athletes and dancers. They tend to agree with former prime minister Yasuhiro Nakasone, who once suggested that blacks were partly responsible for pulling down the intelligence level of the United States. "Some of us who are ignorant still have a wrong idea" about blacks, said Mitsuya Goto, managing director of the Japan Center for International Exchange, which attempts to improve contacts between people in Japan and other countries. He said that "the man on the street in Japan may still have certain prejudices" and pointed out that it is only recently that Japanese companies in the United States have started hiring blacks and begun advertising job openings in publications aimed at black readers. Other Japanese said that blacks, so rare in Japan, seem exotic to many people and therefore very interesting. Sanrio clearly thinks so: in addition to the Sambo line, the company markets a black character called Bibinba, with fat, pink lips and rings in its ears. Spokesman Ide said both lines are popular with children, who "enjoy it with good will. They will not grow up to become racists." Sanrio is not the only Japanese company marketing a black caricature. Recently, black mannequins with grossly distorted lips and greased hair have appeared in department stores in Japan, modeling suits and other clothing. At Sogo department store in Tokyo, two of those mannequins, clad in suits, are frozen in dance poses at the entrance to the men's clothing department. Nearby, clusters of white male mannequins pose sedately in business suits. Masaaki Honjo, a spokesman for Sogo, said the department store has been using the black mannequins since June to model clothing in "high action. They wear a suit, but this suit is very good for action," he said, adding that no one at the store thought the mannequins might portray blacks in a less-than-flattering manner. "We never thought about this point. We have no intention of discriminating," he said. Kauhiro Nakajima, an official with Yamato Mannequin Co., which makes the black models, said the company has 600 of them circulating around Japan for use in trendy displays. "They show strong personality, energy and charm." He said an employee once raised concerns that the mannequins might be racist depictions of blacks, but "our conclusion is it wasn't." CAPTIONS: Black mannequins in dancing poses at Tokyo department store have exxagerated racial features. Spokesman for manufacturer disclaimed racist intent. DESCRIPTORS: Japan; Racial discrimination; Black; Marketing; General merchandise stores ----------------------------------------------------------------------------- Japanese Companies Recall '*Little* *Black* *Sambo*' Products. The Washington Post, July 29, 1988, By: Margaret Shapiro, Washington Post Foreign Service Section: A SECTION, p. a15 Story Type: News Foreign Line Count: 48 Word Count: 534 TOKYO, July 28 - *Little* *Black* *Sambo* toys and beachwear and black department store mannequins with exaggerated racial features have been withdrawn from circulation here after they drew a storm of protest in the United States, the Japanese manufacturers of the items said today. "We have decided to stop making them and to withdraw the existing ones from the market," said Kazuhiro Nakajima of Yamato Mannequin Co., producer of the black mannequins with grossly distorted lips and greased hair that Japanese department stores had begun displaying recently. He said that while Yamato had "no bad intentions" in producing the mannequins, the firm now realizes they offended some people and will stop making them. The Japanese Embassy in Washington has received dozens of angry telephone calls since last Friday when a photo of the mannequins and a story about them and the popular Sambo toys was published in The Washington Post, Foreign Ministry officials said here. The story appeared a day before a top leader of Japan's ruling Liberal Democratic Party, Michio Watanabe, publicly suggested that blacks don't mind going bankrupt, a remark that also upset many American blacks and others. Watanabe has apologized for his remark, saying he did not intend to offend anyone. The U.S. Embassy here, in an unusually harsh statement responding to Watanabe's remarks, said, "We deplore any disparaging comment that, consciously or unconsciously, uses demeaning stereotypes of ANY American to make a point." (In Washington, the Congressional Black Caucus said Thursday it will hold a news conference Tuesday, simultaneously with a National Urban League news conference in Detroit, to discuss the "continuing failure" of the Japanese to address the concerns of American blacks, Washington Post staff writer Don Phillips reported. Selective boycotts of Japanese products will "at least be discussed" at the news conference, a spokeswoman said.) According to Yukio Okamoto, director of the American political bureau of the Foreign Ministry, the ministry contacted officials from Yamato and Sanrio Co., which makes the Sambo products, the day "this shocking photo" and story appeared in The Washington Post. Okamoto, who called the mannequins "disgusting and very offensive," said he did not believe that Yamato and Sanrio had intended to be racist. The company officials, who like most Japanese have had little contact with blacks, expressed "sincere shock" when told these were offensive images, he said. Okamoto said that while Japanese have become more sensitive to issues of minority rights in their own country, where Japanese of Korean origin and handicapped persons have complained of discrimination, "they are only now becoming aware that the same sensitivities are important in other countries as well." Kenichiro Ide, a spokesman for Sanrio, said today, "We have decided to halt production of these characters and are pulling them out of our shops right now." Masaaki Honjo, a spokesman for Sogo department store, which has used two of the black mannequins in a dance pose in its menswear department, said today that Sogo has removed the mannequins and sent them back to Yamato the day the store was contacted by the Foreign Ministry. It has also stopped selling Sambo and Hanna products, he said. NAMED PERSONS: watanabe, michio ORGANIZATION NAME: national urban league DESCRIPTORS: Japan; Black; Racial discrimination; Marketing; General merchandise stores