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読者のコメント:鍼治療 acupuncture

鍼治療 acupuncture

11 Feb 1998

ウェブページを持っているほど知的な人物が、鍼治療にたいして心を開いてくれないことはたいへん悲しいです。鍼が実際に中国で基本的な医療システムとして4,000年も使われてきたことは、あなたにとって考慮に値しないようです。

知性とは心を開いて可能性を求めることです。自分がすべてを知っていると決めつけて自ら可能性から閉じ籠ってしまうことではありません。
Deborah

reply: デボラ、インターネットでたっぷりサーフィンをやっているなら、ウェブページを持つのに知性なんてたいして必要ないことは知っておくべきです。心を開くということは、古い形而上学の体系によって、気とエネルギーの妨げが病気の原因であると信じろと言っているのだと思います。鍼治療には4,000年の歴史があるというのは、私の本の説明とは違いますね。4,000年前に生きていた誰かと、現代の誰かを比べたら、人体を良く知っているのはどちらでしょうか?鍼治療は今でも中国で行なわれていますが、彼らの医学雑誌はどれも鍼治療には言及していません。中国でも、左心冠状動脈に血栓が起きたら、その人は鍼ではなく心臓外科を選ぶでしょう。身近に心臓外科医がいて、なおかつ心臓発作を起こしたくない限り。

知性とは根拠と情報を吟味する方法を知ることです。あなたが真実であってほしいと思う希望を、根拠の中へ持ち込まないで下さい。根拠を吟味するのは、“可能性”という言葉を詩的に修るよりも、ずっと知的なことですよ。


22 Jan 1997

スケプティクス・ディクショナリは楽しいです。私は自分で懐疑的 sceptic(スペルミスじゃないです。私はイギリス人なので)だと思ってるので、興味を持ったのです。あなたも私に興味を持ってくれたらいいんですが。

私が見る限り、あなたは医師の私ほど懐疑的ではないようです。AMA(全米医師会)や BMA(英国医師会)は科学を促進するためではなく、医師を促進するために存在するのです。こんな組織に代替療法について問い合わせるのは、IBMにどこのコンピュータが一番信頼できるか訊くようなものです。

reply: 私は代替療法医たちほど医学にたいして懐疑的ではありません。医師も人間ですから、医学という専門分野に関する限りは、その組織も私たち医師以外の組織と比べて、信頼性や能力などの点では良くも悪くもないでしょう。私は医学分野に対しては、代替療法の分野に対するほど懐疑的ではありません。

代替療法のほとんどは私もクズだと思います。これは直観的な感覚で、ほとんど試したことはありませんけど。カイロプラクティックについてあなたが言及していることを読んで、疑問が一気に解消しました。アメリカで教えられているカイロプラクティックは、イギリスにある同名のそれとは全く違うのです。イギリスでは、カイロプラクティックは整骨療法に非常に良く似たものですが、私の経験では整骨より効果的なものです。私の経験はせいぜい10人程度の療法士にすぎませんが、訓練の違いではなく個人の能力が反映されているのかもしれません。身体の骨をいじることで健康すべて、あるいはその大部分でも調整できると信じているカイロプラクティシャンには、私は会ったことはありません。彼らはもっと合理的です:筋骨組織の問題は、筋骨組織を操作すれば調整できる、というものです。これはイギリスの医師が行なっているのとだいたい同じ方法です。医師は腰痛を鎮痛剤で治療しますから。私が医学部5年の授業で腰について学んだのは4週間にすぎません - それでも患者の大多数は一生のうちいつかは腰痛を患うのです。イギリスの医学教育のこうした手落ちは、私にも患者にもはっきり見てとれます。

私は鍼治療を信奉しているわけではありません。私はこのことを鍼灸師に何度も伝えましたし、効かなくなったら行くのをやめるでしょう。

reply: イギリスのユーモアで明らかなことについて!

鍼治療はプラシーボより効果的だとはいえませんが、私が昔服用した、おそらくプラシーボと対照するために与えられた薬よりは、はるかに効果的だとはいえるでしょう。鍼灸師に会う前に、私は喘息のために別々の薬を3種類、1日5回服用していました。ひとつはステロイド系吸入剤で、過剰に服用すると心臓に負担がかかるものでした。この薬に過剰に依存するのを防ぐため、プロピルアクティック剤を2種類飲むよう指示されました。ひとつは比較的常習性のあるもので、もうひとつはとても常習性の強いものでした。(これらの薬の効果について言及しているのではありません。ここで言いたいのはつまり、医者が薬の常習性について何もアドバイスをくれなかったことです。)常習性が減ってみると、これらの予防薬が手助けになったのかどうかわかりません。ステロイドは今でも毎日必要です。彼らは私の喘息の原因について答えてはくれなかったし、ただ症状を抑えようとするだけでした。

鍼治療をだいたい1学期に1回受けることで、以前飲んでいた薬よりはるかに効果的に喘息を抑えることができているのです。

鍼治療は鍼灸師が言う通り効くのか?これは私にはまったくわかりません:陰陽は哲学的に面白いコンセプトだとは思いますが、物理的な物質ではありません。鍼は心理-身体的な現象だろうか?これは直観的にはわかりません。と言うのは、私は鍼灸を信奉しているわけではないからです。ですが、その通りかもしれません。喘息は心理-身体的な原因で起こることがあり。こうした場合は心理-身体的治療が適切だろう。結局のところ、鍼がどうやって効くのかとか、なぜ効くのかとかは、私にはどうでもいいのです。科学者には興味深いことがらかもしれませんが、患者としては効いてくれれば満足ってことです。もっといい方法があればそっちを試しますし、効かなくなったら行くのをやめるでしょう。

私には、いま受けている鍼治療が必要です。Ventolin(ステロイド)吸入 剤を持ち歩いていますが、これを使うことはまれです。数カ月に1回の鍼と、 毎日薬を飲んでいたころとを比べてみて下さい。ふつう Ventolin が必要な のは、ひどく埃っぽいとか、曇の日にひどく運動したとかいった、とりわけ 悪い状況のときだけです。
Quentin Langley

reply: 何がどう効くのかは私にも関係ないですが、どのように効くかの 説明が科学用語を使ってはいても形而上学的な場合は問題だと思います。そ れと、何かが “効く” と言って、'効く' という語を事実上無意味なぐらいあ いまいな使い方をしている場合も問題だと思います。

西洋人の患者が鍼治療を擁護して言うもっともありがちな意見は、おそら く鍼治療の実用性でしょう:つまり、鍼治療は効くのだ!という意見 です。これは何を言いたいのでしょうか?身体に針を刺すことで気の妨げを 取り除き、陰陽をバランスを整えるのだ、と言うことには必ずしもなりませ んね。せいぜい針で負担が軽減されたと言っているのにすぎない。後者は経 験的事象であって、ここで私は懐疑的になるのです。なぜなら、観察された、 あるいは感じられた効果が他の要因によるものではなく、本当に鍼治療によ るものかどうか、その疑いを取り除くような対照研究がないからです。鍼治 療(あるいは手かざし、瞑想、ミネラル補給など)を信奉する多くの人は、 しばしば生活の多くの部分を一度に変えるので、対照研究をおこなう場合に も特定 の効果について有意性を示して実証するのは困難です。対照研究は鍼 治療の効果が短期的なのか、 それとも長期的なのかには適用できるかもしれ ません。


10 Feb 1997
鍼治療は証明されていない,とはどういう意味ですか?

reply: 鍼治療が気の流れを是正して、陰陽が調和するように流れるよ うにするという意見が形而上学的意見であって、経験論的な研究では形而上 学的な議論を証明できないし、反証もできない、という意味です。

あなたがウェブで指摘している研究は、とっかかりの研究としてはいい線 いっていると思いますが。ニセの鍼とツボを使った鍼治療と本物のそれとを 比較した研究には、問題があるとは思えませんが。この研究の詳細はよく知 りませんけど、あなたは “もちろんダメだ”(鍼治療の裏付けにはならない) と書いて、さらに研究が金の無駄使いだと書いていますね。この研究の有効 性について、実験が十分にコントロールされていないとかいった詳細な反論 はしていません。一般的に行なわれている治療法が効くかどうかを確かめる のが金の無駄使いでしょうか?

reply: 人に針を刺して痛みや喘息などを軽減できるかどうか試す,とい うなら反対しないでしょう。ニセのツボと本物のツボをテストするより、先 に針を刺すことがともかく有効であることをテストで明らかにすべきです。 ニセのツボと本物のツボについては、そのあとです。

新薬のテストについてもあなたは同じ態度(経験論的な研究は金の無駄使 い)をとるのですか?たしかに、鍼治療の裏にある理論(気の流れ云々)は 証明も反証もできません、ですが処方に使う場合、処方を裏付ける理論が形 而上学的に正しいかどうかなんて関係ないのです。私は効くかどうかには注 意を払いますし、この研究は鍼治療ができるとしていることを裏付けると思 いますが。もちろん、鍼治療の効果は経験論的に証明あるいは反証されねば なりません。私の誤解であればごめんなさい。ところで私、懐疑論者はビリー バーを脳なしのバカだと言い、ビリーバーは懐疑論者を心が狭いと言うこと に気づきました。私はどっちも正しいと思います。
RPS

reply: なるほど、私の方も誤解だったらごめんなさい。


23 Feb 1998
鍼治療支持者から寄せられたたくさんのコメントは、“代替的”/非西洋/ 伝統的、な医療が、少なくとも選択の自由がある先進国で、なぜにこれほど 人気があるのかをまとめて語ってくれてます。

ケースその1。“これには4,000年の歴史がある。何かあるに違いない。”こうしたことを言う人達は、唯一受けられる医療が貢ぎ物と引き替えに土地の賢者から受ける伝統治療しかないほど貧しい生活を経験したことがない。そのため、西洋医学の医師は少なく(そして忙しく)、病院を訪ねれば1年の稼ぎが消しとんでしまうようなところのことを考えられないのだ。熱帯地域の人達はマラリアのために何千年も前から伝統薬を使っている。だがマラリアはいまだに世界の死亡原因の第1位だ。第2位のチフスでも同じことが言える。絶望にあえぐ人達は何でも試すものだ:黒死病、コレラ、天然痘、ポリオその他の史実を読んでみたまえ。

ケースその2。 “全米医師会、英国医師会、国立保険サービス(NHS)、疾病対策センター(CDC)その他は自分たちの利権を守るだけだからダメだ。彼らの言い分を信用してはいけない。”これはある程度、事実である。医学は天職であると同時に稼ぐための職業でもあるので、医者の経済的利益を守るように働く。時として、たとえば60年代のタバコ大暴落のように、腐敗した意志が勝利を得ることもある。しかし、鍼灸師やカイロプラクティシャン、薬草師、同種療法師などの商売が妨げられていると考えるのは単純すぎる。医師は外的な職業的規則と同時に内的な職業的規則を認識しているという点で違うのだ。

鍼治療の患者その3。“私の喘息治療には効果があった;薬物療法では潜在的に習慣性があった...”この場合はちょっと難しい。というのは、気管支拡張薬であるはずの Ventolin がステロイドと書かれているからだ。(ステロイド吸入剤は薬剤に接した細胞の代謝を変化させることで作用し、効果が現れるまで数週間から数カ月間の吸入が必要である。)メッセージに書かれた副作用に矛盾はないので、これは最初の段落で述べている処方だと思う。こうした人達は自分の抱える悩みにたいして情緒的に金を注ぎ込んできた。喘息は性病や腰痛などと同様に、この典型だ。これらはすべて慢性的で、いくつかは激発性だ。それゆえに充分危険で、空想的になってしまうのだ。(喘息が毎日死の危険に直結しているような、まれな患者について話しているのではない。薬を飲んで喜ぶような人達のことを話しているのは明らかだろう。)残念ながら、こうした問題が完治してしまっては、人生はつまらなくなる。腰痛体操をしたり最初の2、3週間は下痢が続くような薬を飲むように、こうした人達は鍼治療が(あるいはニンニクカプセルやジンに溶かしたブドウ8粒、その他なんでも)、苦い医師の処方薬よりよく効くと知っているのだ。

鍼治療の患者その4。“新薬のテストについてもあなたは同じ態度をとるのですか?” 教養部へ行って“ソシアルワーカーのための化学”という本を借りて読んでみるといい。二重盲検法がどんなものか理解していないようだ。その手順さえ知らない。新薬がアンディ・ハーディーの方法で開発されていると考えてる。
“やあみんな!癌は自分で直そうぜ!さあ Satureja montana を集めよう!”
なんていう風に。癌が1種類の病気だと思ってる。ニューズウィークやタイムといった雑誌やCBSの60ミニッツが言うことを鵜呑みにしている。

長くなってすみません。気になったことを書いてさっぱりした。
Cheryl Hoffman



鍼治療 (acupuncture)
by
Robert Todd Carroll