Robert Todd Carroll
SkepDic 日本語版
百匹めのサル
the hundredth monkey phenomenon
百匹めのサルとは、生物の個体群が``臨界''に達したときに起こるとされる、自発的で神秘的な意識の飛躍のことである。たとえば、世界の飢餓をどうすれば解消できるか、ある人が考えはじめたとする。そしてその人は、ほかの誰かに自分の考えを伝える。さらにその誰かも、ほかの誰かに、同じように考えを伝えてゆく。こうしてアイデアは広まってゆくが、これが``臨界状況''に達すると、突然、突破口が開けるというのである。不思議なことに、世界の飢餓をどうすべきか、誰もが自発的に考えはじめるというのである。
``百匹めのサル''という表現は、1950年代に、サルを使った実験から名付けられた。この概念は、ライアル・ワトソンがその著書 生命潮流（Lifetide） で主張したものである。彼は、あるサルがほかのサルにイモを海水で洗うのを教えると、そのサルから別のサルへとイモ洗いは伝播し、すぐに島に住むすべてのサルが、イモを海水で洗うようになる、と述べている。それまでは、どのサルもイモを洗ったりしなかったのに、である。島に住む百匹めのサルがイモ洗いを教わると、不思議なことに、物理的にかけ離れていてイモ洗いの習慣を知るはずのない、別の島のサルまでが、突然、しかも自発的に、イモ洗いをはじめたのである！これはサルがテレパシーを使ったせいなのか、それともワトソンの猿芝居なのだろうか？
これはなかなか気の効いた話だが、事実ではない。少なくとも、空間的に離れていて接触のない個体の間で、文化的要素が自発的に伝播するというのは、事実ではない。別の島にも、すでにイモを洗うサルがいたのである。あるサルがイモ洗いをはじめて、すぐに別のサルもそれに加わったのである。その上、観察後6年を経過しても、すべてのサルが海水でイモを洗って土や砂を洗い流すことにメリットを見出したわけではないのである。ライアルは神秘的な伝播を、事実の一部から作り上げたのにすぎない。別の島に住むサルの意識が、イモを洗うという一段高い意識段階に昇ったというのは、ウソである。
臨界状態で意識の上昇が起きるという概念は、ケン・キース・ジュニアなど、ニューエイジの神秘主義者が唱道していることである。キース氏はその著書をWWWページで公開している。我々はすぐにでも突破口を開いて、我々を待ち受ける核の脅威と大量殺戮による破滅から脱出すべきだと説いているのだ。彼の論文のタイトルこそ、百匹めのサル なのである。彼は著書の中で、次のように述べている：``ある時点で、もうあと一人が気づきを得られれば地平が確固たるものになる、という状態になります。そして、世の人々すべてが気づきを得られることになるのです！''う〜ん、これは百匹めのサルという語を広める場合なら、あながちはずれではないかもしれない！というのも、自己や宇宙の神秘的変革を求める心には、終わりがないからだ。M100プロジェクト、あるいは百匹めのサルになろう！プロジェクトを見てみよう。``我々の祈りは、偏見や先入観を持たない世界社会のためになるのです。''こうしたすばらしい目標に異論を唱えるなんて、いったい誰ができようか？100匹目のサルについてもっと知りたい方は、形態遺伝学とサル（Morphogenetics and Monkeys） を読むといいだろう。この本には、内的エネルギーフィールドを高める方法や、予知能力者、ヒーリングや千年紀などについて、最新情報が収められている。魂の函養を唱える連中と地球的連帯を深めるのは、きっとすばらしい経験に違いない。なにしろ、100匹めのサル関係者がいうには、``... 人としての心のいやしは、21世紀に必然的に起こる変化の中心にある''のだから。アーメン。
参考文献
- Follow-Up Senior Researcher Comments on the Hundredth Monkey Phenomenon in Japan by Markus Poessel and Ron Amundson
- The Theory of the Hundredth Monkey Debunked
- "The Hundredth Monkey" by Ken Keyes, Jr.
Amundsom, Ron. "The Hundredth Monkey Phenomenon," Skeptical Inquirer, Summer 1985. Reprinted in The Hundredth Monkey and Other Paradigms of the Paranormal, ed. Kendrick Frazier (Buffalo, N.Y.: Prometheus Books, 1991). $18.36
Amundsom, Ron. "Watson and the Hundredth Monkey Phenomenon," Skeptical Inquirer, Spring 1987.
Possel, Markus and Ron Amundson. "Senior Researcher Coments on the Hundredth Monkey Phenomenon in Japan," Skeptical Inquirer, May/June 1996.
L. Ron Hubbard