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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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グルジエフ
G. I. Gurdjieff (1872?-1949)


“もしすべての人がきわめて知的になれるなら、
人は月に食われようなどとは思わないだろう。”

(--グルジエフ)


ゲオルグ・S・ゴルギアデスはギリシア-アルメニアのカリスマ詐欺師。生まれたのはロシアだがパリで自ら改名し、神秘主義者ゲオルギー・イヴァノビッチ・グルジエフと名乗った。彼はロシアで“人の調和的発展研究所(The Institute for the Harmonious Development of Man)”を設立し(1919年)、1922年にはこれをパリで再建した。グルジエフが、この世界に関するトンデモなオカルトと心霊主義のアイデアを広めたのは、この研究所でのことである。彼はその世界観を、中央アジアを旅していたときある賢者から学んだのだと主張した。彼は自身の“洞察”を、驚くべき人との出会いMeetings with Remarkable men)、すべてそして何もかもAll and Everything)、孫たちへのベルゼブブ伝説:人間の生に対する客観的に公明正大なる批判Beelzebub's Tales to his Grandson: an objectively impartial criticism of the life of man)などと題した本に書き下ろした。グルジエフの面白くもない難解な思索のほとんどは、彼の弟子ピョートル・デミアノビッチ・ウスペンスキーがもっとわかりやすい言葉で書いている。

グルジエフの信奉者の中には、ウスペンスキーを不完全な神秘主義者と見なしているものもいた。一方で、グルジエフとウスペンスキーをともにグルと見なしている弟子たちもいた。

彼らの現在の弟子たちは、以下に挙げるようなグルジエフのもっと馬鹿げた主張については、だんまりを決め込んでいるようだ:

すべての邪悪な行い、すべての犯罪、すべての自虐的行動、すべての英雄的偉業は、日常生活のすべての行動と同じように、月によってコントロールされているのだ。

グルジエフのようなグルが霊的な征服者として魅力的なものとなるのは、どちらかといえば彼のシニカルな信念、たとえば、人類のほとんどは目覚めているのに眠っているかのように振る舞う、といったアイデアに原因があるようだ。またグルジエフは、ほとんどの人は内面的には死んでいる、と洞察した。彼がこうした主張によって言いたかったのは、ほとんどの人は思慮深く仲間に対して疑い深いわけではなく、むしろ信じやすくてだまされやすく、盲従するし暗示にかかりやすい、そして自分の生活を生き生きとして意味のあるものにしたいが故にグルを欲するのだ、ということだろう、私はそう思う。つまり、ほとんどの人は懐疑的でも自発的でもないし、多くの人がグルによって簡単に騙されてしまうのは、意味のある生活を送る方法を示してくれる誰かを探しているからにほかならない、ということを、グルジエフは正しく指摘しているのだ、私はそう思う。彼はその弟子たちに、真の覚醒、つまり通常の意識を超えた覚醒と活力がある状態へいたる道を示した。彼は小説家や芸術家、裕福な未亡人、そして自身の知恵を共有するのと引き換えに自分自身を開拓しようという気概のある者たちを魅き付けることができた。彼は月を使ってさまざまな主張や説明をおこなったが、それは彼自身の想像とたいして代わり映えするものではなかったし、また科学が彼の思索に対してどんな疑問を投げかけようと、怒りを示したりはしなかった。

グルジエフは明らかに強固な人格を備えていたが、世俗と自然科学を軽蔑していたことも、彼の魅力となっていたに違いない。彼からにじみ出る強烈な自信や、彼が発揮した無謬意識は、多くの人たちにとって快適なものであったに違いない。だが彼の教えは、たとえばダニエル・ポール・シュリーバー博士といったグノーシス主義の女史の見た妄想と、たいして変わるものではなかった。シュリーバー博士の精神病の記憶Memoirs of a Neuropath)はフロイトが分析している。(Three Case Histories に収録)

グルジエフの物語のうち、私が好きなのはフリッツ・ピーターズが教えてくれたものだ。教えを請おうと1,000ポンドの布施をおこなった裕福なイギリス夫人に対して“人生の秘密”について説明するのに、グルジエフは売春婦を彼らのテーブルに連れてきて、自分は他所の惑星からやってきたのだ、と言った。自分が食べているのは母星から無料で送られてきたものだ、彼は夫人にそう言った。そして彼は売春婦にいくらか食物を与えて、どんな味がするか尋ねた。売春婦は彼に、チェリーの味がすると答えた。“これこそ人生の秘密だ”、グルジエフはこのイギリス夫人に答えた。夫人はグルジエフを山師呼ばわりしてその場を去った。だが後日、彼女はグルジエフに布施を与えて熱心な信者となった。

霊的な進化や変革を求める人たちにとって、グルジエフとウスペンスキーのようなガイドは古代の伝説的知恵で構成された秘儀的世界への入門を約束してくれるのだ。こうした秘密の世界は、いったん海へ出たのはいいがかじ取り役がいないという人たちには、魅力的に映るのだろう。グルジエフ・ウスペンスキー・センターは世界30カ国以上にある。

関連する項目:エニアグラム (enneagram)ウスペンスキー (Ouspensky)



参考文献

Peters, Fritz. Gurdjieff (London: Wildwood press, 1976).

Storr, Anthony. Feet of Clay - saints, sinners, and madmen: a study of gurus (New York: The Free Press, 1996). $10.40

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 11/21/98
日本語化 04/09/00

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