ノストラダムス
Nostradamus (1503-1566)
フランスの詩人・占星術師。現代の信奉者たちは彼を心して耳を傾けるべ
き予言者とみなしている。彼は四行詩を100作創り、百詩選(Centuries)と
して知られる作品に仕上げた。信奉者はこの詩集を予言集だとしている。懐
疑論者はノストラダムスの詩をほとんど意味不明の代物だと考える。この偉
人は、自分が20世紀のワンマン企業にまでなるということを、はたして予言
していただろうか、私はそうは思わない。出版社はノストラダムスの文を摘
み取って最新の予言が得られたなどといったナンセンスな主張を出版するの
を、けっして止めようとはしない。
エリック・チータムら本物の信者たちは、ノストラダムスは爆弾やロケッ
ト、潜水艦、飛行機の発明を予言したと信じている。彼はロンドンの大火災
(1666)やアドルフヒトラーの台頭やそのほかいろいろな事件を予言したの
だ。
ジェームズ・ランディら懐疑論者は、ノストラダムスの四行詩の解釈に疑
問を投げかけている。
ここでは、ドイツにおけるアドルフ・ヒトラーの台頭を予言したとされて
いる最も有名な四行詩のひとつを、ランディとチータムがどう解釈するか見
てみよう:
原文はこうだ:
Bestes farouches de faim fleuves tranner
Plus part du champ encore Hister sera
En caige de fer le grand sera traisner
Quand rien enfant de Germain observa.
チータム版ではこうだ:
飢えた野獣が河を越え、
戦いの大勢はヒトラーに不利となる。
彼は偉大な男を鉄の檻の中に拘引する、
ドイツの息子が法に従わないとき。
ランディ版ではこうなる:
飢えた野獣が川を泳ぎ渡り、
軍の大勢はドナウの下流に対峙する。
偉大な男に鉄の檻へと拘引させるだろう、
幼い兄弟たちが何も見ることがなければ。
この二人の言わんとすることは、私が解説するまでもなく読み取れるだろ
う。だが、ここで両者がどちらも述べていないことについて、ひとつ付け加
えておきたい。`ゲルマニア(Germania)'とは古代ヨーロッパの土地をさす
言葉であり、ドナウ川北部とライン川東部の地域のことである。また、古代
ローマ帝国の一部で現在のフランス北西部とベルギーとオランダのあたりを
さす場合にも、この`ゲルマニア'という語が用いられる。私にはこの2つの
バージョンの予言詩は、両方とも意味不明である。それに、ヒスター
(Hister)という語はノストラダムスが活躍した時代にはドナウ川のある地
域の通名だった。このことはノストラダムス研究家でさえ認めている。それ
なのに、いったいなぜヒスターがヒトラーになってしまうのか、まったく理
解不能である。
おしまいに、``ノストラダムス:破滅の予言者''というテレビ作品がある
ことを書いておこう。これはチータムの見解を、批判精神も懐疑精神もなし
に誤解だらけで解釈したものだが、アーツ&エンターテイメントチャンネル
の伝記シリーズで放送された。ジェームズ・ランディはこの番組でインタビュー
を受けているが、彼は自分の見解は歪曲されたか無視された、と主張してい
る。ランディ曰く、
今回の一件から、この``伝記''番組を今後どう扱うべきか、私
にはよくわかった。これはたぶん読者のみんなにも同じだろうと期待したい。
このテレビショーのプロデューサーであるクレイグ・ハフナー、ドナ・ルジ
タナ、スコット・パドールには、事実や視聴者教育にたいする尊厳が欠如し
ていることがわかった。だが彼らがトラブルを抱えたりすることはないだろ
う:カネはすでに振り込まれているのだから、彼らは知らんぷりをするだけ
だ。
参考文献
Randi, James. The Mask of Nostradamus : the prophecies of the
world's most famous seer (Buffalo, N.Y. : Prometheus Books,
1993). $15.16
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