サメの軟骨でガン治療 Shark Cartilage as a Cancer Cure
サメの軟骨を粉末にしたものをガン治療薬として勧める者がいる。とりわ
け、ウィリアム・レーン博士はこの薬を自分の会社で生産して、ベネフィン
という名で販売している。レーンは本を2冊著しているが、サメはガンに
ならないなどという、誤った主張をタイトルにつけている。サメはガン
になるし、軟骨だってガンに侵されるのだ。
代替療法はたいてい無益で、ときとして有害な場合がある。レーン博士は
その良い例だろう。彼はほんのちょっとした知識をひきあいに出して、それ
を一般化して、会社を起こして奇跡の治療薬を生産し、本を書いて自分の会
社と製品に都合の良いところだけを宣伝して販売促進を図る。テレビのニュー
スショウに出演して、これは奇跡の治療薬かもしれないなどと、見かけ倒し
でいい加減な物語を語り、しまいには批判者は私の研究が脅威だから潰そう
としているのだ、これは陰謀だ、などと言い出すのである。
中立的な研究者が正当な対照実験のもとにおこなった上で、サメの軟骨が
ガン治療に有効であると結論づけた科学的研究は存在しない。これに類似す
る研究はわずか1例だけおこなわれたことがあるが効果なしという結論が出
ている。その他の研究は現在おこなわれている最中で、結果はまもなく出る
はずだ。
レーンはこの着想を本物の科学者の研究から得ている。この科学者は、ガ
ンのウサギとマウスの血管に、ウシとサメの軟骨を注射したのである。この
処理によって、血管新生は抑制された。つまりガン細胞に養分を供給する血
管の成長が抑制されたのである。研究者のほとんどは、軟骨を経口摂取して
も腫瘍の発生部位に対して有意な効果を及ぼすとは疑わしいと考えている。
研究者は、血管新生に影響を及ぼしたのは軟骨に含まれているタンパク質で
あって、タンパク質は腫瘍につらなる血管に吸収されるよりも、むしろ(胃
腸で)消化されてしまうだろうと考えている。ヒトの血管にサメの軟骨を直
接注射したら、きっとひどい免疫反応が起きるだろう。
どうひいき目に見ても、サメ軟骨の錠剤や粉剤を経口摂取してガンが直る
とは言えないのだ。
代替療法 alternative health
practicesの関連項目を参照のこと。
参考文献
Lynn McCutcheon "Taking a Bite out of Shark
Cartilage," Skeptical Inquirer, September/October 1997.
|