速読 speed reading
速読とは、1分間に10,000〜25,000ワードも読めるとされる能力である。たとえばハワード・バーグは、“前後15行を1度に読むことで”1分間に25,000ワード読めると主張している。これは1分間に80〜90ページを読むのに匹敵する。バーグの場合、トルストイの戦争と平和を読むのに、およそ15分しかかからないことになる。
カリフォルニア大学バークレー校の教育学教授アン・カニンガムと読書の専門家は、読書中に発生する衝動性眼球運動(目の焦点をある1点から別の点へ移動するときにおこる、眼球の頻繁でかすかな断続的運動)を測定した結果から、人が正確に読める最大語数は1分あたり約300ワードだと報告している。“1分間に10,000ワード読めると主張する人たちは、私たちがスキミング(拾い読み)と呼ぶことをおこなっている”と彼女は言う。読書の速度は、おもにどれだけ素早く単語とその意味を理解できるかによって決定される。速く読める人というのは、優れた“認知語彙”を備えた人なのだ。速く読める人は、遅い人に比べて単語を見て理解するのが速いのだ。彼女によれば、読書の速度を向上するには読解力と学習戦略を高めるべきだという(ロバートソン)。
バーグは、何十年か前にジョン・F・ケネディといった人たちに人気があったイブリン・ウッズのリーディング・ダイナミックス講座をパッケージし直した。バーグの教室に参加したレポーターの1人は、バーグは彼の5時間のコースで読解力について、実戦で鍛えられるだろうと示唆する以外には、それほど多くを語らなかったと指摘している。だがこのことは、サクラメント市民講座に1教室あたり51ドルを支払った35人のうち、何人かを思いとどまらせるにはいたらなかった。彼らはオーディオテープを65ドルで購入したのだ(ロバートソン)。
学習技術や語彙や読解力を鍛えるのを目的としているコミュニティカレッジのコースに参加していれば、この生徒たちはもっといい成果が得られただろうに。コミュニティカレッジの方が市民講座より安上がりだったろうし、前後10行を1度に読むなんてことに時間を無駄に費やして終わることもなかっただろう。文章は熟読するよりも拾い読みした方が速く読めるとわかるが、その一方で、こうした技術の有益性は限られている(たとえば新聞を毎日読むには良いだろうが、物理を勉強したり良い小説を読むには向かない)、とわかったとき必然的に生じるフラストレーションも避けることができただろう。スキミングをやると、単語やアイデアを理解して楽しむのは、ほとんど不可能になる。言葉とそこに込められたアイデアを楽しまないのなら、いったいなぜフィクションを読むのだろうか?テキストを熟読せずに拾い読みしてきたような医者や弁護士を雇いたがる人など、いるだろうか?
参考文献
Robertson, Blair Anthony. "Speed-reading between the lines," Sacramento Bee, October 21, 1999, front page.
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