サブリミナル、潜在意識
subliminal

リミナル（限界刺激）とは、検知できるぎりぎりの知覚のこと；サブリミナルとは、リミナル未満の知覚のこと。本当に人が検知できる知覚に達しない刺激であれば、どんなものであれその定義上、知覚することはできない。だが、サブリミナルは一般に意識による知覚のしきい値未満といわれている。経験的研究によって強固に裏づけられているわけではないが、人の行動は、その存在や内容に気づかないうちに、サブリミナルメッセージによって影響を受けると広く信じられている。つまり、言葉やイメージを使って密かに意識下の意識へ訴えかけることによって、人の行動に影響を与えることができる、と信じられているのだ。もしこれが事実だとしたら、広告屋は広告にサブリミナルメッセージを仕組んで消費者行動を操ることができるだろう。政府やヒルダおばさんは、密かにサブリミナルへ語りかけて私たちの意識をコントロールすることができるだろう。勉強する場合も、サブリミナルメッセージを仕組んだ音楽を聞いて学習することができるだろう。残念ながら、“...長年の研究の結果わかったことは、非常に限られた範囲でならば、意識下の刺激には効果がある”が、行動の変化において有効だとする裏づけはないのだ。（ハインズ、312ページ）

サブリミナルメッセージの有効性について経験的な裏づけがほとんどないのだが、無意識に働きかけて“リスナー”に万引きさせないようにするとか、“リスナー”をコーチして勇気を与えたり、優れたことを成し遂げる能力があると信じさせる、といったテープを無数の企業が生産販売していて、この勢いは止らない。ホリスティック催眠という場所では、MBAの学位を持っていてsynergistic scienceの経験があると自称するジェームズ・H・シュメルターが開発した、さまざまなテープを販売している。もしシュメルターのがらくたがお気に召さなければ、サクセス・カセット社のサブリミナル・インスピレーションをどうぞ。

私たちは知覚していると意識しなくても知覚できるというのは事実だ。だが、テープにメッセージを仕組んだ上に音楽を記録して、メッセージが音楽やその他の音でかき消されるようにしている連中は、もしメッセージが他の音でかき消されたら、人が知覚できるのはメッセージをかき消している音だけなのだ、ということを知っておいた方がおいだろう。ヒトが他の音のレベル以下となって意味が聞き取れないようなメッセージを聞き取れるという根拠はない。もちろん、もしこのメッセージの意味が聞き取れるなら、それはサブリミナルではないだろう。

サブリミナルメッセージに行動を操作する力があると信じられるようになったのは、1957年に広告業者のジェームズ・バイカリーから始まったようだ。彼はニュージャージー州の映画館で、“Drink Coca-Cola”と“Hungry - Eat Popcorn”というサブリミナルレベルのきわめて短いメッセージを映して、ポップコーンとコーラの売り上げをそれぞれ58 ％と18％も伸ばしたと主張した。この主張はウソだったことが明らかにされているにもかかわらず、そして誰もこの現象を再現できていないにもかかわらず、サブリミナル神話への信仰はいまだに生き残っているのだ。

サブリミナルメッセージ信仰は、1980年代にはウィルソン・ブライアン・キーのクラム-プレート・オージーとメディアがあなたの行動を操作するのに使っているその他のサブリミナル（The Clam-Plate Orgy and Other Subliminals the Media Use to Manipulate Your Behavior）が出版されて、超現実的なまでに盛り上がった。キーは、広告屋は行動操作のためにきわめて深刻な性的サブリミナルメッセージを用いていると主張した。ハワード・ジョンソンのメニューを注意深く調査したところ、メニューに描かれた貝の絵は多くの人とロバが性的乱交をしているのを描いたものだ、キーはそう見なしたのだ。キーがおこなった数多くの根拠のない主張には、無意識はサブリミナルメッセージを光速で処理するというものもある。現実には、脳内プロセスのうち最速のものでも時速40マイル（約64km/h）にすぎない。（ハインズ）

関連する項目：催眠術 (hypnosis)、マインドコントロール (mind control)、パレイドリア (pareidolia)。

参考文献

• Subliminal Messages in Windows 95?
• University of Texas School of Advertising Bibliography on Subliminal Advertising
• Layne Wallace's research
• Are We Already Learning In A Subliminal Way? by Melvin D. Saunders (Repeats the Vicary hoax as if it were fact, among other irresponsible things.)

Hines, Terence. Pseudoscience and the Paranormal (Buffalo, NY: Prometheus Books, 1990). $23.95
テレンス・ハインズ．ハインズ博士「超科学」をきる Part II 臨死体験から信仰療法まで．井山 弘幸 訳．化学同人．

Volkey, J. and J. Read. "Subliminal Messages: Between the Devil and the Media," American Psychologist (1985), pp. 1231-1239.

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