パレイドリアと火星の人顔岩 pareidolia and the
face on Mars
パレイドリア(変
像)とは幻視や錯覚の一種で、なんらかの視覚的な刺激が何か他のものや人
などに見えたりすることである。これには、例えばトルティリャの焦げめや
樹木の傷がイエス・キリストに見えたり、雲や公衆トイレの床の模様が聖処
女マリアに見えたりするものなどがある。シナモン入りパンの中にマザー・
テレサが見えたり、月面に
人が見えたり、火星に人面が見えたりもするのだ。
異常現
象はたいてい、心理的な錯覚であるパレイドリアで説明することができる。
たとえば、UFO目撃談や、レコードを逆回転させると不吉なメッセージが聞こ
えたといった主張の多くは、パレイドリアで説明できる。悪魔やビッグフッ
ト、ネッシーなどの目撃談も、パレイドリアで説明できる。また、火星のキ
ドニア平原の写真に人面や建造物が見えると主張する人がいるのも、パレイ
ドリアで説明できるのである。
しかし臨床的にみると、心理学者の中には患者を理解する手段としてパレ
イドリアを積極的に利用している者もいる。おそらく、最も悪名高い例とし
てはロールシャッハテストを挙げることができ
るだろう。
天文学者 カール・セーガンは、トルティリャや雲やシナモン入りパンな
どの中に人の顔が見えるのには、進化論的特徴がみられると信じていた。彼
は以下のように書いている:
乳児は物を見ることができるようになるとすぐに、顔を認識するよ
うになる。私たちは、こうした働きが頭脳にしっかりと組み込まれている
ことを知っている。100万年前、生まれてきた乳児が顔を認識することがで
きず、親に微笑みかえしてその心をつかむこともなかったなら、きっとヒ
トという生物種はこれほど繁栄しなかっただろう(Sagan, 45)。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。いずれにせよ、次に述
べる火星の人面にたいするセーガンの説明は、私たちがなぜこれほどまで顔
にこだわるのかの説明よりも、ずっと理にかなったものである。1976年、バ
イキング探査機は火星の画像を送ってきた。それは人の顔のように見えたが、
NASAは光の加減で偶然そう見えるのにすぎないと述べた。ある者は、これを
NASAの隠蔽工作だと受け取った。技術者やコンピュータの専門家の誰かが
NASAの画像をデジタル処理して顔を強調した。こうしたことから、この顔は
人類の彫刻であり、その隣には寺院や城が見えるという主張をも生むことに
なった。ある者はこう考えはじめた:これらは古代ペルーに飛行場を作り、
ミステリーサークルを描いて人類とコンタクトをとろうとしているのと、同
じ連中が作ったものではないか?また、薄弱な証拠と壮大な空想にもとづい
て、こうした光のマジックを信仰にまで高めてしまう者もいた。セーガンは、
もっとまっとうな、地に足をつけた説明を加えている。火星の人面岩は侵食
と風食その他、自然な作用でできたものである(Sagan, 52-55)。
火星の人面岩は、トリノの聖骸布を作った
のと同じ者の仕業かもしれない。聖骸布の顔と火星の顔はよく似ている。た
ぶん家族なのだろう。
関連する項目:古代の宇宙飛行士
ancient astronauts、シッチン Sitchin、
ヴェリコフスキー Velikovsky。
参考文献
Sagan, Carl. The Demon-Haunted World - Science as a Candle in
the Dark (New York: Random House, 1995). $11.20
Schick, Jr.,Theodore and Lewis Vaughn How to Think About Weird
Things, (Mountain View, California: Mayfield Publishing Company,
1995), ch. 3. $15.96
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