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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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カーディフの巨人
The Cardiff Giant

カーディフの巨人とは、大洪水以前に生きていたとされる、身長10フィートあまり、足のサイズは21インチもある巨人の、にせものの化石である。この``化石''はじつは石膏の板を削ったものにすぎず、1869年に``発見''されるほんの数年前に作られたものだった。このでっちあげを思いついたのは、タバコ製造業者で無神論者のジョージ・ハルだ。彼は、この事件の発端となったニューヨーク州カーディフの農場所有者 スタッブ・ニューエルの遠縁にあたる。専門家はほとんど瞬時に、この``化石''がじつは化石ではないことに気づいたのだが、彼らの警告は無視されてしまった。科学者がこれはにせものだと宣言しても、50セント払って``ゴリアテ''を見に集まる客の流れを阻止することはできなかったのだ。この``化石''はゴリアテをはじめとした聖書の巨人にまつわる記述が正しいことを証明している、といったうわさが流れた。好奇心から聖書の教える歴史の産物を見てみようと、一日何百人もがニューヨーク州の外れにある農場を訪れた。

この``発見''から一週間もしないうちに、ニューエルはこの巨人の利権のうち4分の3を、ニューヨーク州シラキュースのシンジケートに3万ドルで売り払った。これは悪くない話だったので、P・T・バーナムはこれを手に入れて出し物にしたいと思った。彼はこの巨人を、サーカス巡業をする3カ月間だけ賃借したいとニューエルに申し入れたが、ニューエルとシンジケートはこの頼みを断った。そこでバーナムはこの巨人のにせものを作り、カネを払った観客に、にせもののにせものを見せることにしたのだ。ニューヨーク市でこの両方が同時に展示されてみると、なんとバーナムの作ったにせもののにせものの方が、本物のにせものをしのぐ人気を集めたのだ![Feder, p. 36]

ケネス・フェダーは著書 考古学の伝説とウソで、カーディフの巨人のエピソードについてこう書いている:

プロの科学者のように訓練を受けた観察者はこの巨人を見て、 これがどう転んでも石膏でできた真っ赤な偽物だと明言した。しかしながら、 こうした客観的、合理的、論理的かつ科学的な結論は、影響力を持ちえなかっ た。巨人にはふだんなら分別のあるはずの、多くの人々の感情に訴えかける ものがあった。そして巨人を本物だと信じるのを思いとどまらせるようなも のは、なにもなかった。人々が巨人を本物だと信じたのは、...それが本物 だと信じたかったからだ。[Feder, p. 37]

ようするに、科学の専門家にしばしば疑惑のまなざしが向けられるのは、証拠によって裏づけられるものだけを信じたいという願望に起因するわけではない。むしろ証拠があるにもかかわらず信じたいものを信じようとする願望に起因するのだ。

この``化石''は現在、ニューヨーク州クーパーズタウンにあるファーマーズ博物館で展示されている。



参考文献

Feder, Kenneth L. Frauds, Mysteries and Myths, ch. 3, (Mountain View, California: Mayfield Publishing Co., 1990).

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 10/30/98
日本語化 02/11/00

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