Robert Todd Carroll
SkepDic 日本語版
ペンタグラム、五芒星
pentagram (pentacle, pentangle)
ペンタグラムとは五角の星型のことである。ピタゴラス学派、フリーメーソン、グノーシス派、カバリスト、魔術師、ウィッカ、悪魔教徒などは、魔術やオカルトのシンボルとして用いる。この図形の幾何学的構造には、明らかに何か魅力的な要素がある。シンボリズムの多くでは、いちばん上位にある頂点は人間の頭や人間以外の霊を表している。場合によってはこの図形を上下に反転して、霊を形而上学の最下層へ追いやることを意味することもある。図形を反転するのは逆さ十字やミサを逆におこなうのと同じように悪魔的行為だとする者もいる。また、星形を逆さにしてもべつに悪いことではなく、邪悪な力を意図せず招来してしまうといったことを恐れずに逆さの星形を用いる者もいる。
ペンタグラムが神秘的なのは、５という数字が神秘的だからだと言う者もいる。５は素数であり、２と３の和でもあり、１と４の和でもある。キリストはイバラの冠で負った傷を別にすれば、体の５ヶ所に傷を負ったとされる；そして彼は5000人に５切れのパンを与えたとされる。もっと大事なことは、私たちは手足にそれぞれ５本の指を持ち、５感を備えているということだ。
キリスト教の番犬たちの中には、ペンタグラムを悪魔の足跡だと考えている連中がいる。このことは明らかだ。彼らはとりわけ、逆さの星形を悪魔崇拝の証拠だとして警戒しているが、こうした悪を求めて終わりなき探索を続けるお節介な表象学の番人たちにとっては、ペンタグラムならどれでもいいのだ。もちろん、企業にとってはペンタグラムその他の、邪悪と受け取られるようなシンボルを使っているといったうわさが広まったりしたら、経営上まずいだろう。プロクター・アンド・ギャンブル（Ｐ＆Ｇ）はかつて、悪魔崇拝者が経営していて邪悪なロゴを使って悪魔教を広めようとしているとして、ひどく糾弾された。そのロゴは、三日月の中であごひげをはやした老人が13個の星を向いているというもので、全体を丸で囲んだものだった。老人のあごひげの中には黙示録で獣の数字とされている666という数字（キリスト教の番犬たちはふつう悪魔の数字と見なしている）が隠されている、と言う者もいたし、悪魔の印そのものとされる山羊が見えると言う者もいた。
ウィッカ信者にとっては、ペンタグラムの５つの頂点は気、火、水、土、霊を示すものである。ウィッカでは星を円の中に描くのがふつうで、これは伝統的に永遠の永続性を示すものとされてきた。古代の中国人は５つの基本要素（木、火、土、金、水）、５つの惑星、５つの季節、５つの感覚、それに加えて５つの色、音、味覚があると信じていた。だが彼らにとっては、５より６という数字の方がもっと魅力的だったようだ。というのも、易経は６を基本数として用いるからだ。ダビデの星は正三角形を二つ重ねた図形で構成されていて６つの角があるが、これと同じだ。ダビデの星はヘキサグラム（籠目模様）だが、呪いをかけたりするものではない。呪いに使う六角形の類は、ドイツ語で魔女という意味の Hexen から来たもので、もともと古代高地ゲルマン語で魔女を意味する hagzissa を語源とするものだ。
もし幾何学的形状が図形の神秘性の基礎となるのなら、ペンタグラムよりヘキサグラムの方が神秘的と呼ぶにふさわしい、個人的にはそう思うのだが。
神秘主義者は誰でも、悪から身を守ったりオカルトの知識と力を高めようとして、ペンタグラムの護符を身に付ける。彼らは地面にペンタグラムを描いてその中に立ち、オカルトの力を招来しようとしたりもする。頂点が北を向いているなら、彼らは悪魔崇拝者ではない。だがもし南を向いていたら、彼らは悪魔崇拝者だ。キリスト教の番犬たちはそんなことを言っている。
夜空の星はどれ一つとしてペンタグラムには見えないが、ペンタグラムはいくつかの理由から星のシンボルとなっている。飲み屋を５軒ばかりはしごして、街の五つ角から見れば、ペンタグラムに見えるのかもしれない。また、神秘主義者の中には、小さなペンタグラムを長時間じっと見つめていれば、５つの頂点すべてを結ぶ円が見えるのだ、などと主張するものさえいる。
penile plethysmograph