ちびくろさんぼの本リスト
(Last update:1999/11/12)
- ◆印は、1988年に版元に在庫があったもの。89年には在庫なし。
- [国]は国立国会図書館、[日]は日比谷図書館児童室所蔵。
- ●印は、99年現在、出版されているもの。
- 編者のつぶやき。
リストの戦後部分は、おもに日本図書館協会『「ちびくろサンボ」問題を考える―シンポジウム記録』巻末の出版目録と、本やタウンの検索をもとに作成した。また、「てるてる」氏による日比谷図書館児童資料室目録と照らしあわせて、欠けているものを数冊補ったが、表記等が一致しない場合は元のままにした。
各資料に出版年などのくいちがいがあるほか、資料の不備な点、漏れている作品もかなり残っていると思われる。たとえば朝日ソノラマから出た「ちびくろサンボ」の出版年が不明でリストに入れていない。ほかにもお気づきの箇所があったら(誤字脱字など細かい点でも)お知らせください。(99/10/08)
私が実物を確認できた作品は残念ながら十指に満たない。
戦前の翻訳・改作については『焼かれた「ちびくろサンボ」』による(同書では詳しい分析がなされている)。わかっている範囲では、一つの国で出版された異本の種類は、日本は)アメリカと肩を並べるほど多い。アメリカで出版された改作『Sam and The Tigers (邦訳:おしゃれなサムとバターになったトラ)』のまえがきによると、「50種類もの異なる本が存在する」ことがわかり、それ以降も「古書店に出かけ、型抜き本やポップアップ本を含め、サンボの本をたくさん見ました」とある。本家イギリスはどうなのだろう。けれどもともかく、それらが一度にすべて絶版になった、というような“事件”は、日本だけなのだ。(欧米についてもいずれリストを作るつもりだけど)(99/10/07)
「ちびくろサンボ」は かつてこ〜んなにあった!(日本編)
戦前の翻訳・改作・異本
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1907(明治40) サンボーの手柄 『英学界』(『英文少年世界』改題)編集局編集 有楽社 『東西お伽噺』
(『英文少年世界』第一巻第三号1904.3、第五号1904.4、第九号1904.6に初出。絵はオリジナル版を白黒で紹介。英文併記)
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1924(大正13) 虎 村山吉雄(=鈴木三重吉) (『赤い鳥』一九二四年八月号) 昔話的に物語だけを部分的に改変して紹介。
- 1931(昭和6) 黒坊のサンボー三村良輔訳 (『童話教育』第二号) 絵は挿絵のみ。
- 1937 ザンボート虎 (『コドモノクニ』) 絵は挿絵のみ。
- 1937 クロンボ ノ サンタクン ト トラ ノ オハナシ (『キンダーブック』一九三七年一月号(第九巻第二号)附録『ツバメノオウチ』に収録) 画面の上部四分の三に絵がつけられ、絵物語形式。
- 1940頃 黒坊物語 (幼年雑誌(不明)の附録と思われる) 10.5×7.5cm 1953年の岩波より早くマクミラン版を原本にしている。絵もフランク・ドビアスを模写。一冊の絵本としての体裁を整えた作品としては、日本最初のもの。
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1953 紙芝居ザンボーと、とら 教育画劇
(原作・鈴木三重吉、脚色・福島のり子、画・井口文秀、と記されているので、当時、鈴木三重吉が創作したものと誤解されていたのかもしれない)
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1953 ◆ ちびくろ・さんぼ
光吉夏弥訳 フランク・ドビアス絵 岩波書店 60p. 21cm
(岩波の子どもの本 幼、1、2年向 1) [国、日]
ふたごのうーふ・むーふを収録。岡部冬彦絵。
- 紙芝居ちびくろさんぼのぼうけん
幼児教育紙芝居研究会編集、森山蕃絵 東京画劇社
(みわ書房のページで読める)現存していない紙芝居がほかにもかなりありそう。
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1956 ちびくろ・さんぼのぼうけん バンナーマン、および、フランク=ベックによる四つの続編 光吉夏弥訳編 若菜珪絵 光文社
124p. 21cm (世界新名作童話)[国、日]
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1957(4?) ちびくろ・さんぼ 飯沢匡構成・文 人形と装置のデザイン・土方重巳
人形の製作・川本喜八郎 装置の製作・中川涼 天然色写真撮影・隅田雄二郎
フレーベル館 14p. 26cm (トッパンの人形絵本 22)[国、日]
- 1957 チビクロ・サンボ 清水浩二 人形劇団ひとみ座編 未来社 231p. 18cm (人形劇脚本集 第2) [日]
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1960 ちびくろサンボのぼうけん 講談社 338p. 22cm (世界童話文学全集 5 イギリス童話集)[日]
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1961 ちびくろサンボのぼうけん 子どもの文学研究会 ポプラ社
222p. 22cm (よんでおきたい物語 2) [日]
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1962 ちびくろサンボ 川崎大治文 松本かつぢ絵 講談社
56p. 26cm (講談社の絵本ゴールド版 101)[日]
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1962 ちびくろさんぼ じんぐうてるお訳 日本児童文学者協会
実業之日本社 270p. 22cm (母と子の文学読本 第1巻 小学初級編)[日]
- 1963 ◆ ちびくろサンボ 川崎大治文、与田準一・川崎大治・乾孝編 童心社
228p. 26cm (ね、おはなしよんで)[日]
- 1963
ちびくろサンボと十ぴきの子ざる バンナーマン作 村上幸雄文
大日本図書 269p. 23cm (幼児の喜ぶお話の本 4〜5歳)フランク・ベック原作 [日]
- 1963 ちびくろサンボのぼうけん 土家由岐雄文 石田武雄絵
羽仁説子ほか監修 偕成社 91p. 27cm (幼年絵童話全集 7 世界の名作どうわ) [日]
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1964 ちびくろサンボのぼうけん 偕成社 23cm [日]
1964 ちびくろサンボ 足沢良子文 マキノプロダクション絵 (世界の童話5 アメリカ・イギリス童話集)
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1965 ちびくろサンボのぼうけん 神宮輝夫文 司修絵 偕成社
124p. 23cm (世界の童話 24)[国]
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1965 ちびくろサンボ 宮下正美編著 東都書房 190p. 23cm (おはなし幼稚園 読んで聞かせる世界の童話)[日]
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1965
ちびくろ・さんぼ 清水たみ子編 金の星社 165p. 22cm
(少女世界童話 一年生)[日]
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1966 ◆ ちびくろサンボのぼうけん 神宮輝夫文 瀬川康男絵
偕成社 34p. 27cm (世界お話絵本2)[国、日]
1966 ちびくろサンボ 猪熊葉子訳 講談社 158p. 22cm (せかいのおはなし 14)[国、日]
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1966 ちびくろサンボ 森いたる文 深沢邦朗絵 小学館
103p. 28cm (世界の話オールカラー版 9)『ピノキオ』も収録 [日]
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1966 ちびくろさんぼと、十ぴき小ざる フランク=ベック原作 田島義雄脚本 (学芸会の脚本と演出 3年生の学校劇)[日]
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1968 ちびくろ さんぼ 大石真文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 1)[国、日]
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1968 ちびくろ うーふ・ちびくろ むーふ 鈴木徹郎文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 2)[国、日]
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1968 ちびくろ ぼっぶ 大石真文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 3)[国、日]
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1968 ちびくろ かーしゃ 鈴木徹郎文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 4)[国、日]
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1968 ちびくろ きーば 鈴木徹郎文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 5)[国、日]
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1968 ちびくろ みんご 大石真文 村上勉絵 ポプラ社 27cm (ちびくろ絵本 6)[国、日]
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1968 ちびくろサンボ 宮川やすえ他文 小野木学他絵 講談社
84p. 22cm (ワイドカラー世界の名作童話)[国]
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1970 ちびくろ・さんぼ ヘレン=バンナーマン原作 大石真文 おのぎがく(小野木学)絵 ポプラ社
62p. 26cm (おはなし絵文庫 1) [国、日]
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1970 ちびくろさんぼ ヘレン=バンナーマン原作 鈴木繁雄文 真島節子・和歌山静子絵 世界出版社 23p. 28cm (世界のえほん ABCチャイルド第3C) [日]
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1970 ちびくろサンボ バンナーマン作 はたのいそこ(波多野勤子)文 みやたたけひこ(宮田武彦)絵 旺文社
96p. 22cm (旺文社ジュニア図書館) [国、日]
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1970 ◆ ちびくろさんぼ 関英雄・塚原亮一編 金の星社 165p. 22cm
(ジャンボ世界の童話 一年生)[日]
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1971 ちびくろサンボ 宮川やすえ他文 小野木学他絵 講談社
92p. 30cm (デラックスカラー世界の名作童話 6)
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1971 ちびくろサンボ 水野プロ文・構成 アドコスモ作画 講談社
27p. 28cm (世界の名作絵ばなしオールカラー版) [国]
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1971 サンボとふたごのウーフ・ムーフ はたのいそこ文 旺文社
96p. 22cm
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1971 ちびくろサンボ H.バンナーマン原作 茨木のり子文 小野かおる絵 世界文化社 30p. 25×27cm
(ドレミファブック 第6)[日]
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1972 ちびくろサンボ バンナーマン原作 大石真文 西原比呂志絵 集英社 72p. 26cm
(オールカラー母と子の世界の名作 24) 「タッグ ラック ボブテイル」収録 [日]
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1972 ちびくろサンボ ヘレン=バンナーマン原作 谷村まち子文 菊池貞雄・浦田又治絵 ポプラ社 37p. 28cm (オールカラー名作絵本 11) [日]
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1974 ◆ ちびくろさんぼ 安田浩編 白眉学芸社 177p. 26cm
(幼児オペレッタ集) [日]
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1975 ちびくろサンボ 山元護文文 赤坂三好絵 小学館
27cm [国]
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1976 ◆ ちびくろ・さんぼ バンナーマン作 森いたる文 童公佳絵 金の星社
78p. (せかいの名作ぶんこ 4)[国、日]
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1977 ◆ ちびくろサンボ 平田昭吾文 井上智絵 ポプラ社
25p. 27cm
(アニメ・ファンタジー 1)[国]
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1977(1968?) ちびくろさんぼとふたご 白木茂文 新幼児童話研究会編 ひかりのくに 306p. 22cm (幼児に聞かせたいお話 12ヶ月 第3)[日]
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1978 ◆ ちびくろさんぼ 星山博之文 高橋信也絵 学研
56p. 22cm (学研ひとりよみ名作 13)
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1978 ◆ ちびくろサンボ 中山知子文 太田大八絵 講談社 32p. 27cm
(講談社の絵本 17)
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1979 ◆ ちびくろさんぼ 富田博之 日本演劇教育連盟編 国土社 254p. 22cm (新作小学校劇脚本選 初級) [日]
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1979 ◆ ちびくろさんぼ 平田昭吾文 イノウエ智画 ポプラ社
25p. 19×21cm 550円 (アニメファンタジー 1)
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1981 ちびくろサンボ 星宮一郎文 井上智絵 講談社
111p. 22cm (よみものアニメシリーズ 11) [国]
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1981 ちびくろサンボ 宮下正美文 鈴木未央子絵 講談社 190p. 22cm
(おはなしだいすき 5分間読んできかせる世界の童話) 1965東都書房から出されたものの改題 [日]
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1981 ちびくろサンボとあそぼう 竹井史郎作 梅田富士雄絵 学研
68p. 23cm(A5) 650 (学研ひとりよみあそび) [国]
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1982 ちびくろサンボ はたのいそこ(波多野勤子) みやたたけひこ(宮田武彦) 旺文社 92p. A5 800円 (旺文社ジュニア図書館)
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1982 ◆ ちびくろサンボ 間所ひさこ文 伊藤主計・森やすじ絵
講談社 32p. 27cm 580円 (講談社の新幼稚園百科 B−4) [日]
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1982 ◆ ちびくろサンボ 筒井敬介他文 高橋健二・金田一春彦監修
小学館 108p. 22cm 1200円
(世界名作童話全集 10)
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1983 ◆ ちびくろさんぼ おばらあやこ文 大林のぼる絵
学研 24p. 19×21cm 500円 (学研アニメカラ−名作えほん 18) [国]
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1984 ◆ ちびくろサンボ 平田昭吾企画・構成・文 高橋信也・大野豊画
ポプラ社 45p. 18×19cm 450円(世界名作ファンタジー 12)[国]
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1985 ◆ ちびくろサンボ 平田昭吾著 成田マキホ絵 永岡書店
48p. 15×15cm 350円(名作アニメ絵本シリーズ 21) [国]
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1985 ◆ ちびくろサンボ バンナーマン原作 岡本文良文 P.リチャードソン画 小学館
72p. 27cm 580円 (国際版はじめての童話 15) [日]
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1986 ◆ちびくろ・さんぼ
川崎大治文 二俣英五郎絵 童心社
24p. 26×53cm(B5) (たのしい世界名作選)
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1986 ◆ ちびくろさんぼ 立原えりか文 サンリオアニメスタッフ絵
サンリオ 45p. 15cm 330円 (名作アニメランド)
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1986 ちびくろサンボ 講談社 17p. 27cm(B5) 300円
(講談社のびのび絵本)[国]
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1986 げんきなサンボ 矢崎節夫文 奥田怜子絵 世界文化社
37p. 27cm (おはなしえみっく) 400円 [国]
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1986 ◆ ちびくろサンボ ひしたかずこ 岡上鈴江編 ぎょうせい
127p. 22cm (ぎょうせいララバイ・ストーリー 6月のおはなし) [日]
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1987 ちびくろ さんぼ 佐野語郎 ひかりのくに (表現力を伸ばす劇あそび脚本集)
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1988 ちびくろサンボ 牧杜子尾 ポプラ社
254p. B5 2800円
(みんな知ってる世界名作童話劇 新作学校劇第一巻 1年生)
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1988 ちびくろさんぼ バンナーマン原作 生越嘉治著 あすなろ書房 (名作童話劇 クラス全員が出演できるどの子にもセリフがある)
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1988 ◆ ちびくろさんぼ バンナーマン原作 平田昭吾作 大野豊画 ポプラ社
22p. 19×21cm(B5) 580円(スーパーアニメファンタジー 2)
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1988 ◆ ちびくろサンボ 高田一恵文 白川忠志絵 雄鶏社
45p. 15×15cm(文庫) 350円 (おんどりアニメ絵本館)
1988年末 すべての「ちびくろさんぼ」が絶版に。
(雄鶏社のみ89年1月20日に絶版)
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1989/08 ● ブラック・サンボくん
ヘレン・バナマン作 山本まつよ訳 阪西明子絵
子ども文庫の会
58p. B7 700円
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1997/10 ● チビクロさんぽ
森まりも 北大路書房 A4
1,200円
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1997/11 ● おしゃれなサムとバタ−になったトラ
ジュリアス・レスタ−文 ジェリ−・ピンクニ−絵
さくまゆみこ訳
ブル−ス・インタ−アクションズ
B4 2,200円
"Sam and the tigers"
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1998/10 ● トラのバタ−のパンケ−キ
ババジくんのおはなし
ヘレン・バンナ−マン作 フレッド・マルチェリ−ノ絵
せなあいこ訳 評論社
B5 1,600円
(児童図書館・絵本の部屋)
"The Story of little Babaji"
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1999/05 ● ちびくろさんぼのおはなし
ヘレン・バンナ−マン 灘本昌久訳 径書房
62p. A6 1,000円
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1999/10 ● The Story of Little Black Sambo
ヘレン・バナーマン 灘本昌久監修 3,500円
いま入手できる本たち
『The Story of Little Black Sambo』
Helen Bannerman
径書房
\3,500
1999/10 13cm 57p
ISBN4-7705-0172-2
復刻 初版:第2版 Grant Richards 1899年刊
日本語訳につづいてついに
原書の復刻版発売
19世紀にイギリスで刊行された「ちびくろサンボ」を、
極力手を加えずに、原型に近い形で復刻。バナーマンの
オリジナルのイラストも忠実に復元。本文はすべて英語。
『ちびくろさんぼのおはなし』
ISBN:4770501730
62p 13×9cm
99.5.20出版
径書房
ヘレン・バナーマン【作・絵】〈Helen Bannerman〉
なだもとまさひさ【訳】
NDC:E \1,000
これが本当の『ちびくろさんぼ』。日本で初めての発売です。
おかあさんが子どものために作った手作り絵本から生まれた名作。
産経新聞の書評(99/07/10):
英国の古書店で手に入れたニ刷を写真製版する復刻作業も大変で、
訳者は「費用が回収できないのでは」と思っていた。
紹介記事
『ブラック・サンボくん』
ヘレン・バナマン
阪西明子【絵】
山本まつよ【訳】
子ども文庫の会
出版年月:89.08
13cm 58p
NDC:E \700
感想:ちびくろさんぼよりかブラック・サンボのがカンジ悪いぞ〜
あー、でもコレ手に入ってうれしいです。やはし、改訂版はなんか、
イマイチだったので。1989年初版で1996年第五版のモノ。売ってたのか..96年までも.(わっ。おなじ玲奈だけど別人です。しかもリンク切れ)
各社そろって絶版にした年のわずか半年後に、原作にかなり忠実な
訳とサイズで新たな本を出版した意気込みと実行力に大はくしゅぅ!
とはいえ山本氏が「ヘレン・バナマンがつくった通りの絵本」にしたいと
動機を述べた(『季刊飛ぶ教室』1989.11)わりには、まったくそうなっていない。むしろ山本オリジナルとでもいうべき新たな異本を作った、という問題はある(別ページで再検討)。
(『絶版を考える』によると、「黒人差別をなくす会」から
配達・内容証明付き郵便で期限を切った返答を要求する手紙を
うけとったりなど、そうとういやな目にあったらしい。ちびくろ
さんぼについては、「今後一切かかわりたくない」という立場を明らかに
している。(141p.))
ISBN:456600385X
18×17cm
98.10.10出版
評論社
ヘレン・バンナーマン【作】〈Helen Bannerman〉
フレッド・マルチェリーノ【絵】〈Fred Marcellino〉
せなあいこ【訳】
NDC:E \1,600
登場人物に、伝統的なインドの名前をつけた。
感想:黒人「サンボ」がインド人「ババジくん」になってもトラがぐるぐる回ってバターになる、あの奇想天外さは健在。主人公を黒い犬にした絵本『チビクロさんぽ』も出ていますが、わたしはこちらの『トラのバターのパンケーキ』のほうが好きです。幼い頃に読んだものに近いような気がするので。
ISBN:4938339331
26×27cm
97.11.13出版
ブルース・インターアクションズ
ジュリアス・レスター【文】〈Julius Lester〉
ジェリー・ピンクニー【絵】〈Jerry Pinkney〉
さくまゆみこ【訳】
NDC:E \2,200
感想1:
主人公は「サム」という名に変わり、動物と人間が共存する国の
ファンタジーとして描き変えられています。
文・絵とも黒人であるアーティストによるもので、
ブラックミュージックを主に出している音楽出版社からの出版
という異色の絵本です。
感想2:
トラがバターになるシーンは一番の見せ場であり、かつオチであるにもかかわらず、それをタイトルにしていることが問題なのです。もうそんなもの読む気も起きません。オチがわかっているんですから。
原著のタイトルは“Sam and the Tigers(サムとトラ)”なんだけどね……。
ISBN:4762820989
21×21cm
97/10/20
(京都)北大路書房
ヘレン・バナマン【原作】〈Helen Bannerman〉
森まりも【訳・改作】
NDC:E \1,200
感想:
主人公は黒人の男の子でなく真っ黒な犬。
犬の名前は「ちびくろ」。なんじゃ、こりゃ。パロディか?
と、思ったが内容はあの「ちびくろサンボ」そのもの。
そう、「ちびくろサンボ」の「ヤバイ」とされる部分を取り除いてできた苦肉の策絵本がこの「ちびくろさんぽ」なのである。
そんなもん、「復刊」しない方がまだマシである。こんな形で苦し紛れに出版するよりは、無くなった名作を偲んでいた方がずっとずっといい。
報告:
6月15日(火) 仕事場に
売れ行き良好書・話題書のご案内− 北大路書房−
「ちびくろサンボ」問題で話題再然!!
小社の関連書籍も併せて平積みをお願いします。
『チビクロさんぽ』
トラがバターになるこのストーリーは、やっぱり楽しい!おもしろい!!
発刊時、テレ朝のニュースステーションの特集で取り上げられた話題作!!
という、エクスクラメーションマークのたくさんついたFAXが送信されてきた。
この作品については別に考えたい。とくべつあつかいなのだ、うっふっふ。現在作成中。
もう手に入らない本たち
『ちびくろ・さんぼ』
岩波書店
絶版までの出版総数はおよそ120万部で、
他社のすべての改作をあわせた数より多いといわれる。
最後にサンボが食べたホットケーキの数は、オリジナルが169枚なのに対し、
マクミラン版が196枚とまちがえたのを岩波版もそのまま使っていた。
(イラストに196の数字が描きこまれていたためであろう。
(1978年の改訂版で、イラストの数字と文章を169枚に訂正するほか、
訳の矛盾や、人種差別に配慮してかなりの箇所を変更している)
専門家のあいだでの評価が割れたおもしろい事件が1965年の『ちびくろ・さんぼ』真贋論争だった。
『3歳から6歳までの絵本と童話』のコメントをご参照あれ。
ぜんぶ読みたい?
『ちびくろサンボのぼうけん』
偕成社
ほかに絶版になった本の画像、どこかにないかなあ。だれかちくって〜。
TRCでいったんは注文できたものの――手に入る!? と喜んだのに――、
やはり、というべきか、絶版・品切れを理由にことわられてしまった本。
- 83-15700 世界名作童話全集 学習版 10 『ちびくろサンボ』小学館 <¥1,200>
-
86-00417 世界名作ファンタジー 12 『ちびくろサンボ』ポプラ社 <¥450>
- 88-05690『ちびくろさんぼ』
サンリオ名作アニメランド 10/サンリオ <¥330>
- 86-29487『オレンジの好きな犬 「チビクロ・サンボ」の島で暮らして』町田玲子 学生社 <¥1,300>
- 81-23638『ちびくろさんぼとあそぼう』 学研・ひとりよみあそび 学研 <¥650>
- 81-17944『ちびくろサンボ』よみものアニメシリーズ 11
ポプラ社 <¥780>
ほとんど毎年のように新しい「ちびくろさんぼ」が作られていたという事実に驚きつつ、すでに入手が不可能になった作品を惜しみながらキーをたたいているうちに、どれもこれも実物を見たくなってしまう。いつか、このリストを手に、国会図書館と日比谷図書館に行こう。なにか特別な日を選んで。そして、ゆるされるなら、ぜんぶ写真にとってこよう。
そんな決意のあとでふと、頭に浮かんだこと。
講談社やポプラ社をはじめ、こんなに多くの出版社や書き手たちが、
原作の恩恵をこうむっていたのだ。
文章の著作権が切れているおかげで、イラストを自由に
つけて出せば、ストーリーの肝心なところはそっくりいただいて、
コンスタントに売れる改作(怪作)を出すことができる。
おいしい商売である。
もしも絶版事件が起こらなければ?
◆印のついた本の多くはそのまま増刷され、
新たな改作・異本もまたつぎつぎに作られ、その行為の反省もなにもなく、
もしかするとヘレンの原作を(私を含めた)多くの人たちが
知る機会もなく、原画が日本で出版されることもなかったかもしれない。
絶版は(たとえ怪作であっても)まちがった判断だ。――けれども、そのおかげで、いま手元にある小さな1冊の復刻版を祝うことができる。皮肉なことに。(径書房は、灘本さんは、絶版騒ぎがもしもなかったら、
どうしていたかしら?)(99/10/06)
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