Robert Todd Carroll SkepDic 日本語版 |
ランドマーク・フォーラム(Landmark Forum) /ランドマーク・エデュケーション株式会社(Landmark Education Corporation)ランドマーク・フォーラムは、 150 人近くにものぼるセミナー参加者が、自分の真の可能性を実現することを支援するのを目的とした 大規模自己啓発セミナー(Large Group Awareness Training program) の一つである。 ランドマーク・フォーラムは、 ワーナー・エアハードから est の「テクノロジー」を購入し、 1985 年にはじめられた。 ポール・デレンゴウスキー(Paul Derengowski) によると、 1991 年に団体名をランドマーク・エデュケーション株式会社 (Landmark Education Corporation 略して LEC)と変更し、 コミュニケーションと創造性を重視した他のいくつかのプログラムとともに、 ランドマーク・フォーラムというトレーニングを提供し続けてきた。 エアハードの兄弟であるハリー・ローゼンバーグ(Harry Rosenberg)が LEC を率いており、この会社は年間 5000 万ドルを稼ぎ出し、 約 30 万人の参加者を集めた。 LEC は、 est 同様、サンフランシスコに本部を置き、 11 ヶ国に 42 の支部を持っている。 しかし、少なくとも表向き、エアハードは LEC の運営には関与していない。 est に集まっていた 60 〜 70 年代のフラワー・チルドレンではなく、 90 年代のニューエイジの探検者を LEC はターゲットにしている。 est を特徴づけていた、「It」の探求はなくなった。 また、しばしば虐待的で、冒涜的で、品性がなく、 権威主義的なものだった est の禅の師のアプローチもなくなった。 フォーラムは、明らかに est と同じくらい権威主義的だが、 冒涜的でも虐待的でもない。 est トレーニングのように奇妙な尿意のコントロールは、 LEC の参加者には明らかに要求されていない (訳注: est では、 7 時間近くもトイレに行けないということがあったという。 ランドマーク・フォーラムでも、 やはりセッション中は席を立ってトイレに行ったりすることはできないが、 est のようにそれが異常に長い時間ではないという意味だろう)。 LEC は、厳しい哲学的なトレーニングによって、 ある種のコミュニケーションや生きていくためのスキルを教え、 人々が自分の人生を変えることを支援するのを目標としている。 LEC が宣伝している効果は、とても壮大で曖昧なものだ。 そのプログラムは、「オリジナルで、革新的で、影響力がある」 ものであるとして迎え入れられている。 セミナーを受ければ、 「並外れた、奇跡とさえ言えるような結果を創り出すことが、 参加者には可能になります。 そして、他人に強い影響を与えられるようになったり、 日々計画的に生きることができるようになるといった、 役に立つ実践的な新しい自由が手に入ります」。 「人々が無限の可能性を生み出し、 そして違いを創り出せるようにエンパワーする」ために、 ランドマークは提供されています (訳注: 「可能性」、「違いを創る」、「エンパワー」などは、 セミナーでよく使われる言葉。 この他には、「機会」、「達成」、「責任」、「立場を取る」などもよく使われる)。 「わたしたちの仕事は、成長と発展のための限りない機会を、 個人、人間関係、家族、コミュニティ、ビジネス、団体、 そしてそれらの総和である社会に提供することです」。 ランドマークは、「成功して」おり、「国際的に知られて」います。 わたしたちは、「桁はずれのコミュニケーション -- すなわち、自己表現と達成の結果であるパワフルな傾聴とコミットされた会話 -- を生み出すことにコミットしています」 (訳注: 「コミット(commit)」はセミナー用語で、「誓い、全力で取り組む」こと)。 ランドマークは「エキサイティングで、チャレンジング、そしてエンジョイできる」 ものです。 「わたしたちは、満足、自己表現、責任、そして誠実という 立場を取っています。 わたしたちの大変素晴らしい顧客、アシスタント、 スタッフはこの立場に満足しています」。 そしてもちろん、あなたという人間の可能性や、 あなたの「無から何かを創り出したり、生み出したり、発明したり、 デザインする能力」のすべてが発揮されるように LEC はお手伝いしたいと思っているのです。 [ランドマーク・エデュケーション憲章] 先に書いたように、とても壮大で曖昧だが、 それにもかかわらず、何かしらインスパイアされる文章である。 LEC のセッションは、大きく感情が動かされる体験に違いない。 わたしは est にもランドマークのセッションにも参加したことはないが、 集めることができた参加者の話によれば、 平板なものでもなければ、感情が動かないような体験でもなかった。 ジル・P・カプッゾ(Jill P. Capuzzo)は、 次のように書いている。 「他のセミナーであれば、元気づけてくれような抱擁があるものなのだが。 この話には、あなたはとても驚かされるだろうが。」 (訳注: ライフスプリング系のセミナーでは、参加者同士が抱きしめあったりする)。 彼女はまた次のように主張している。 「フォーラムの一番いらつくところの一つは、受講するように強引に売り込むことだ。 リーダーは、人生で新たに見つけた愛を祝福するというセッションに 友だちや家族を連れてくるように、 そして次回の週末のセミナーにエンロールするようにすすめている」 (訳注: このセッションとは、 火曜日の夜に行われる第一段階のグラジュエーション・ナイトのことである。 また、「エンロール(enroll: 参加登録)」とは、セミナー用語で、 単純に言ってしまえば「勧誘」のことである)。 カプッゾと一緒に参加した人たちの 20% が、 そのオープンになっているセッションに誰かを連れてきたそうだ。 そして彼女と一緒にセミナーに参加した人たちのおよそ半分くらいが、 アドバンス・コースに契約したという。 また、アンディ・テスタ(Andy Testa)は、 ランドマーク・フォーラムに関する体験を投稿しているが、 それによれば、彼が抵抗していることが、 彼が助けを必要としている証拠であると力説する勧誘者に追い回されたという。 一部の人たちは、ランドマーク・フォーラムのようなプログラムに参加した後で、 ブレイクダウンを経験したと言っている [ランドマークのセッションに参加した Lell、及び est とランドマークに関連した心理学論文誌の概要 を参照] (訳注: 「ブレイクダウン(breakdown)」は、セミナー用語で「落ち込み」を意味する)。 45 才のステファニー・ネイ(Stephanie Ney)は、 2 日間のランドマーク・フォーラムのセミナーが、 「わたしとわたしが本来持っていた心理的な防御を剥ぎとって裸にしてしまったし、 父とのうまくいかなかった関係の亡霊を解き放ってしまったわ」と語っている。 そして、その結果、彼女は神経衰弱になり、神経科クリニックに入院することになったという (訳注: この部分はセミナー用語が用いられている。セミナー用語を使って訳せば、 「精神的にブレイクダウンし、神経科クリニックにコミットすることになった」)。 しかし、わたしは、一部の参加者が傷つくような体験をしたということで、 急いでランドマークを非難しようとは思わない。 サイエントロジーのようなカルトや、 ランドマークのようなセルフ・ヘルプのプログラムにたどり着く人たちの多くは、 その時既に問題を抱えているのだ。 一部の人たちは本当に深刻な問題を抱えていて、 トレーニングは彼らを精神的におかしくしてしまったかもしれない。 しかし、それは誰の落ち度なのだろうか? セシル・B・デミル(Cecil B. DeMille) の映画「十戒(The Ten Commandments)」 を見た後で「邪悪な」女性を殺し始めた男のように、 そのような人たちは映画を見に行っても精神的におかしくなってしまうかもしれないではないか。 別のある参加者は、 フォーラムでの経験を 「人生において、もっともパワフルで危険な体験だった」と記している。 彼は、セミナーの後で混乱しまくり、 3 日間仕事にならなかったといっている。 「フォーラムに参加した後の 3 日間は生き地獄だったな。 あれは、俺が 21 年間の通常の教育や、 ニューヨークでの 6 年間の医学研修で体験してきた何物にも似ていなかったね」 と言っている。 ところが、この参加者は、それをもう一回体験してみたい! とも言っているのだ。 あるハレ・クリシュナ信者は、 同志である精神世界の旅人たちに、 LEC のトレーニングを受講するようにすすめている。 彼は、平均的な人なら次のように言うだろうと主張している。 つまり、ランドマークのセミナーを受けて、他人への影響力が高まったり、 創造性が豊かになったり、自信がついたり、 人生において何が本当に大切なのかがわかるようになりよい決断が下せるようになったり、 人生を複雑にしないでより満足できるように生きる方法を知ることができて、 人生がよりよいものに変わりましたと。 彼は、人々が超越的な実感に到達するのに、ランドマークが役に立つとも考えている。 また、ポール・デレンゴウスキーは、 ランドマークには「神学的な含みがある」とも考えている。 その人の過去、そして現在の信念が、個人の成長を妨げているということを、 トレーニングでは強調しているように見える。 だから、伝統的な信仰の擁護者が、 ランドマーク・フォーラムのようなプログラムを恐れる理由はわかりやすい。 事実上、ランドマークのようなプログラムは、伝統的な信仰のメンバーに対し、 「君が本当の自分になるのを、君の信仰が妨げているのだ」と言っているからだ。 LEC トレーニングに、実用的な価値を見出している人たちもいる。 プリンストンの政治学のある Ph. D. と個人的にやりとりをしたことがあるが、 彼は次のように言っていた。 コースに参加した後もずっと長い間、 ぼくがそこで学んだことは毎日の生活の中で役に立っていて、 それがフォーラムの一番の価値じゃないかと思っています。 詳しく聞いてみたところ、彼は次のように書いてくれた。 ・・・フォーラムが強調しているのは、実は行動なんですね。 自分自身が気持ちいいとか、そういう実体のないゴールではないんです。 これに関しては、セミナーの中で提示されるものの考え方の一つに、 次のようなものがあります。 それは、わたしたちが取っている行動のほとんどは、 相手がわたしたちの行動に対してどう反応するだろうかということと、 相手が取った過去の行動にどんな「意味」があるのだろうかという ことに関する大きな仮説にもとづいているというものです。 自分が創り出した仮説の存在(これは個人個人に固有なものですが) に一旦気づいてしまえば、自分の解釈が妥当なものかどうかに関わらず、 それが自分のものの見方や決断にどのような影響を及ぼしているのかがわかるようになります。 多くの場合、それは妥当なものではなかったと気づくでしょう、 そしてその結果、自分の習性を変えるか否かを選択することができるのです。 ぼくの場合の例を 3 つ挙げましょう。 まずは、ぼくと妻の関係です。 ぼくは、自分の恐れや不安を彼女とシェアすると、 彼女が不安になるだろうという仮説にもとづいて、 それを彼女には隠していました (訳注: 「シェア(share)」はセミナー用語で、「分かち合い」のこと)。 ぼくは、ぼくが絶対に落ち着いていて頼りになるような人間であることを、 彼女が求めていると思ってたのです。 ところが実際には、当然かもしれませんが、ぼくがそうしていたことこそが、 彼女を落ち込ませていた原因だったのです。 ぼくは本当に彼女をいつも助けてきましたが、 彼女は決してぼくを助けることができませんでした。 ぼくはこれに気がついて、自分の不安や心配を、 もっと喜んで彼女とシェアするようになりました。 そして、彼女はぼくをより近く感じるようになり (彼女がそういってくれたので、ぼくはこれを知ったのです)、 ぼくたちの関係はより平等に、そしてお互いに支えあうようになりました。 2 つめの例は、ぼくの父との関係です・・・。 父がぼくのことを本当は愛していないというストーリーを、 ぼくは自分の心の中に創り出していて、 父がぼくを育てるためにしてくれたことのすべては、 単なる義務感か何かでやっていたのだと思っていました (訳注: 「ストーリー」もセミナー用語の一つ)。 ぼくは実際、他人にもそう話していました。 (父がぼくの博士論文を一語一語本当に読んでくれたことを知って、 このストーリーはとても固持できるようなものではなくなってしまい、) これもまたぼくが創り出したストーリーにすぎないことがわかって、 ぼくは彼に謝り、覚えている限りで初めて父さんを抱きしめることができたんです。 (ぼくはこのことが起こる前だったら、 この話は実にありきたりなセンチメンタルなものだと感じただろうと思います。 でも、それはたぶん父との関係が大切だということを、 ぼくが認めたくなかったからだと思います。 わたしたちの両親との関係というものは、 ぼくの場合がそうだったようにとても遠く離れていて疎遠なものであっても、 いつでも大切なものだということが事実だったのです。) 最後の例は、ぼくが見知らぬ人たちとどんな関係を作っているのかということです。 これまでの人生で、ぼくは自分のことをずっとオタクだと思ってきました。 そして自分がイケてないやつだということがずっと気になっていたし、 ぼくの本質的なオタクっぽさがばれてしまうのを恐れて、 知らない人たちとあまりしゃべらないようにしてきました。 これは他の誰でもない、ぼくが持っていた自分自身についての認識だったということを実感し、 見知らぬ人と話すのを抑制しようとする感じがなくなりました。 そして、郵便局で会った人、髪を切ってくれている女性などと、 どうでもいいようなことをしゃべっている自分を見つけたりします。 [ロジャー(Roger)との個人的なやりとり] なぜ同じトレーニングがこんなにも違った反応を生み出すのだろうか? ランドマーク・フォーラムのような大規模自己啓発セミナーに契約する人々の多くが、 必ずしも普通の健康な成人とは限らないという証拠がある。 Y. Klar, R. Mendola, J. D. Fischer, R. C. Silver, J. M. Chinsky and B. Goff が Journal of Consulting & Clinical Psychology [990; 58(1): 99-108] という論文で次のように報告している。 この研究は、 大規模自己啓発セミナー(LGAT) に参加しようとしている個人の 心理社会的な特性を評価するために行なったものである。 満足、人生におけるネガティヴな出来事、社会的な支援、哲学的傾向という尺度において、 LGAT の一つに分類されるフォーラムの参加予定者たちを、 参加しない彼らの対照群(peers)や、入手可能な規範的なサンプルと比較を行なった。 その結果、参加を予定している者たちは、 その対照群や社会一般の規範的なサンプルと比べて有為に悩んでおり、 そして対照群(これは規範的なものではないが)に比べて、 最近の人生におけるネガティヴな出来事の影響を、 より高いレベルで被っていることがわかった。 助けになりそうなセミナーと契約するような人たちというのは、 問題を抱えていたり、満足していなかったり、 自分の能力が十分発揮されていないと感じていたり、 指示を求めていたりするような人たちだということである。 つまり、参加する人々の非常に大多数が、何かしらの悩みを抱えているのは、 ほとんど必然的なことなのだ。 そして同様に、悩んでいた時期が終われば、多くの人たちは回復し、 問題は少なくなり、より満足感や達成感を得て、喪失感が減少するといったことが、 「回帰」によって期待される。 よって、多くの個人成長プログラムの参加者は、 そのプログラムのおかげでよくなったと発言することが予測できるが、 彼らの推論のほとんどは因果関係を誤認しているのだろう (訳注: つまり、人生いいこともあれば悪いこともある。 悪くなった後には、普通よくなるはずである。 だからよくなったのは、ひょっとするとセミナーに参加したからかもしれないが、 実は放っておいても同じようによくなったかもしれない。 その辺を錯覚している人が多いんじゃないかという意味)。 その一方で、大規模自己啓発セミナーに参加した後で急に具合が悪くなったという人が、 大きく心をかき乱された原因をその参加に求めるのも、 また因果関係を誤った推測である。 サイコセラピーが必要な人は、大規模自己啓発セミナーに参加するべきではない。 感情的に脆弱になっているので、セミナーは強烈すぎるだろう。 ランドマーク・フォーラムが、参加予定者に、 自分は精神的にも肉体的にも健康であると言う証書に署名させるのは、 十分な理由がないわけではないのだ。 こうしておくことで、フォーラムに参加した後でブレイクダウンしたという 参加者が起こすかもしれない法的行為から、 身を守ることができるかもしれないからだ。 しかし、これはまた、 このプログラムが精神的や肉体的に不安定な人には向いていないことを 物語っているのである。 このトレーニングは、 身の回りの人たちとのよりよいコミュニケーションの取り方だけではなく、 よりよい関係の築き方にも力が入れられている。 そして、参加者に自分の人生を振り返ったり、考え直したりさせる。 こういったコースが、もしも本当にいいものだったら、 それは多くの人たちに新たに自分自身を創りなおすように促すだろう。 そして多くの人たちは、すぐにポジティヴな効果を得るだろう。 実際、多く人たちはとても感銘を受け、 その体験を他の人たちとシェアしたくなっているようだ。 そして、彼らはそのプログラムの熱烈な信者や勧誘者になっている。 しかし、そのような熱狂の一部は、友人や家族をプログラムに連れてきたり、 引き続くコースへ契約するように、 強くプレッシャーをかけられていることによるものだ。 一部の参加者たちによれば、 いやがらせと紙一重とも言えるような電話をかけてくることも含め、 強いプレッシャーを伴った参加者とのダイレクトなコンタクトこそが、 ランドマークの主な販売方法だという。 一部の批判者は、勧誘こそがプログラムの主なゴールであるとも考えている (Flatermayer)。 LEC 体験の種類 わたしがこれまでに読んだことがある est やランドマーク・フォーラムの参加者の話によれば、 その体験は最低のもので混乱と挑発、最高のもので人生の変容(transformation)である (訳注: 「変容」ないし「トランスフォーメーション」はセミナー用語)。 これは、一部の参加者の人生の感情的な部分に何か深く触れるようなものが、 そこにはあるということを示している。 ラビのイスロエル・ペルスキー(Yisroel Persky)のように、 何人かの人たちは、提供されているものは 「秘教的な装いをこらした常識的な概念」 より少しだけマシなものに過ぎないと言っている (Flatermayer)。 しかし、(心理学や哲学やコミュニケーションの技術の分野に関して) 教養があり博識な人物にとって常識であっても、 そうでない人たちにとっては輝ける洞察のようなものかもしれない。 (偉大なる精神から選び抜いてきたような) メッセージの本質のようなものが何かあるには違いないだろうが、 (結局)そのメッセージを伝える人や伝え方の重要性の方はそれほど評価されていない。 メッセージを伝える人は信頼されなければならない。 そして誠実に見える必要がある。 また、自信に満ちていなければならない。 メッセージを理解させるのにどのようにしゃべったり、 体を動かしたりすればいいのかを知っている必要もある。 コミュニケーション技術を習得している必要がある。 更に、ウィットとユーモアがなければならない。 話し上手でなければならない。 そして話しただけではなく、言った通りにはっきりと実行する必要がある。 そして大きなグループを相手にして、 グループのメンバーのエネルギーや熱意が、 お互いに影響を与えあうようにする必要がある。 もしメッセージを伝える人が成功すれば、 参加者は充電されてセミナーを終え、 世界に立ち向かう準備ができているだろう。 回復すること(revival)によって、 彼らは元気づけられる(revived)だろう。 参加者は 16 気筒のエンジンで駆け抜けるだろう (訳注: 16 気筒なんて車はまずない。普通は 4 か 6 くらいである)。 彼らはチューンナップされ、ターボチャージされ、 そして人生を変えるようにエンパワーされていることだろう。 多くの人たちがランドマーク・フォーラムや、 神経言語プログラミングや、 est (そして場合によってはサイエントロジーや アムウェイ)などのようなプログラムを よかったと感じてきた理由というのは次のようなものだ。 これらのプログラムは人々にポジティヴな方向と焦点を与え、 まわりには似たような考え方をする人がいるのでその傾向が強められる。 これは人々が心の平安に到達したり、 今まで達成することができなかったゴールに到達するのを助けるだろう。 配偶者や子供との個人的な人間関係を改善し、 友人や家族との人間関係を解決するのも、これらは手助けしてきた。 プログラムは、参加者が自分に関してより意識的になったり、 人生を考えたり見直したりといった、 ほとんど誰も普通の火曜日にはしないようなことをさせる。 理性的な人は、自分の人生、 また人生における大きな問題をよく振り返ったりするものだが、 それは気持ちのいいことだし、ものごとに展望を与える。 いずれにせよ、そういったことは満足を感じさせるものなのだ。 LEC のトレーニングに参加した人たちの多くは、 ランドマーク・フォーラムが、 彼らに欠けていたパワーと自信を与えてくれたと感じている。 いい気持ちやその人の習性に対する影響のいくつかは、 インスピレーションに満ちたミーティングの後の恍惚や、 激しい感情的な体験の後に得られる新しい認知のように、 尾をひくものかもしれないし、一時的なものかもしれない。 よくなったという感じのほとんどは、おそらく予測可能な回帰によるものだが、 これによって多くの参加者がフォローアップのコースや、 アドバンスのセミナーを受講したくなるのである。 しかし、それは非常に高価なものだ。 たとえば、 LEC のアドバンス・コースは 700 ドル、 そしてコミュニケーションとパワーに関するアドバンス・コースは 1050 ドルだ。 ウィズダム・プログラムは 1700 ドルかかる。 関連する項目 est、 火渡り(firewalking)、 大規模自己啓発セミナー(Large Group Awareness Training programs)、 神経言語プログラミング(neurolinguistic programming) 参考文献
Barry, Dave. "Altered States" in The Miami Herald, April 13, 1997. (Humorist Dave Barry takes Peter Lowe's SUCCESS 1997 12-hour success seminar featuring Anthony Robbins, Elizabeth Dole, Rabbi Harold Kushner, Brian Tracy, Lou Holtz, Jim Morris, Peter Lowe, Pat Riley, Dr. Ted Broer, George Bush, and Dan Kennedy.) Lell, Martin. Das Forum: Protokoll einter Gehirnwaeche. Der Psycho-Konzern Landmark Education. May 1997. Deutscher Taschenbuch Verlag GmbH & Co. KG, Muechen. 訳者コメント 日本では、元マインド・ダイナミックス(Mind Dynamics)のトレーナーで、 ライフスプリング(Lifespring)の創設メンバーの一人だった ロバート・ホワイト(Robert White)が、 ライフスプリングのメンバーの協力を得て 1978 年にはじめたライフダイナミックスが自己啓発セミナーの老舗であり、 最大手であった(1999 年に日本人向けコースは中止。 現在は香港などで開催している)。 そして日本の他の多くのセミナーもここから派生してきた。 一方、 est に起源を持つランドマーク・フォーラムは、 これより数年遅れて、小南奈美子氏(通称「ナミさん」)により、 1985 年頃に日本に上陸した。 彼女は、元々ハワイで内科医を勤めており、 est と出会ってトレーナーになった。 この団体は、最初フォーラムと呼ばれ、後にブレークスルー・テクノロジー、 ランコード、ランドマーク・エデュケーションなどと名前を変更している。 ワーナー・エアハードも何度か来日して、セミナーを行なっている。 フォーラムの第一段階のセミナーの様子は、 参考文献にも上がっている Time の "The Best of Est?"、 そして日本語では『マインド・レイプ』、『自己啓発セミナー』などに紹介されている。 日本で行われているセミナーの多くはライフスプリング系なので、 これらを読むと、フォーラムの内容は、 普通の人が持っている自己啓発セミナーのイメージとは、 やや異なっていることがわかるだろう。 est 系のセミナーでは、ライフスプリング系のように、 参加者同士で抱き合っておいおい泣くようなセンチな部分が少なく、 トレーナーの誘導に沿って、自分自身や人生を見つめ直すような実習が多い。 ところで訳者は、セミナーは決してすすめられるものではないと考えている。 以下のコメントには、そのようなバイアスが大きくかかっていることを、 ここでお断りしておく。 このドキュメントでは、参加してよかったとか、 よくなかったとかという話が、いくつか取り上げられている。 以下、 Web 掲示板などで取り沙汰されている日本の場合の例を、 est 系のセミナーに限らず紹介しよう。 参加してよくなったという意見のほとんどは、 要約してみれば、「セミナーに参加したことで、 自分が今までいかに愚かなことをしてきたかということに気づき、 それを改めて、人生楽しく送れています」とか、 「自分を受け入れることができました」とか、 「人の温かさを知った」とかいうものである。 例えば、このドキュメントで紹介されているプリンストンの政治学の Ph. D. の話は、その一例である。 ところで、セミナーの肯定者に実際に話を聞いてみると、 あまり具体的にどこがよかったのかがわからなかったり、 そもそも本当によくなったのかどうかもあやしいこともある。 特にライフスプリングの系譜のセミナーの場合、 よかったという話がとらえどころがなくなってしまうのは、 実はその多くは、単にセミナーでの体験にとても感動したことで、 何か効果があったという気がしているだけではないかと訳者は想像している。 とは言え、それが思い込みに過ぎなくても、 元気になって楽しく過ごせているのなら、 それはそれでも十分な効果だと言えるだろう (受講料が高額な割にはかなり少ない効果だと思うが)。 なお、こういった効果は持続しないで、時間がたつとなくなってしまう。 効果が持続しないのは、自己啓発セミナーに限らず、 各種グループ・セラピーなどにも共通して見られる現象である。 セミナーやセラピーの世界と日常生活があまりにかけ離れていたり、 そもそも効果が思い込みに過ぎなかったりする場合にありがちな現象だと想像される。 そして、いくつものセミナーやセラピーを渡り歩く人たちが生み出されている。 一方、セミナーに参加してよくなかったという話は、 (時には明らかにめちゃくちゃな)実習で傷つく体験をしたとか、 エンロールで人間関係を壊しまくってしまったとかいうものが多い。 中には、参加費を捻出するのにサラ金で金を借りたとか、 ネットワーク・ビジネスに誘われたとかいうものもときたまある。 また、これは参加者全体からすれば相対的にごく少数かもしれないが (ただし、絶対数は決して少なくない)、精神科にかつぎ込まれたり、 その後も通院生活を続けているという深刻なものまである。 それから、参加中のことではないが、 参加後にハイになって何でもできると思い込み、 現実に立ち向かったところでその壁の厚さにノックアウトされ、 落ち込んだり、精神的におかしくなったという話もよくある。 また、参加者本人はよくても、周囲から、 セミナーにはまっていて異様に見えるとか、 エンロールが迷惑だとか、それが元で絶交状態になってしまったとか、 人が変わったようになって怖いとか、 仕事がうまくいかなくなっているという声も聞かれる。 周囲からの心配というのは、余計なおせっかいに過ぎないこともあるが、 実害を被っている場合も多い。 周囲からのこのような声が決して少なくないのは、 セミナーに参加したことで、日常生活を営んでいく上で、 少なからぬ摩擦を引き起こすような人が、 かなりの頻度で生み出されていることを示唆しているのだろう。 なお、東京都消費生活総合センターによせられた 「自己啓発講座」に関する相談概要 も参考になる。 参加して一時的に元気になったり、自信がでてくる人も多いが、 その一方で傷ついたりする人も存在し、 周囲にはさまざまな迷惑をかけることがあるということは、 受講をすすめる側も受講する側も十分承知しておいた方がいいだろう。 なお、参加すれば、更に上級のコースに参加するようにすすめられたり、 新しい参加者を連れてくるように言われることになるのはいうまでもない。 また、個人的に参加するのはともかく、 最近は特に、自己啓発セミナーを会社の上司にすすめられたり、 研修として実施されるなどとということがあったりして、 断ることが大変難しいという問題が、 自己啓発セミナー関係の Web 掲示板でしばしば話題にのぼっている。 会社の研修で ST(感受性訓練)や、自己啓発セミナーに参加して、 精神的におかしくなったり、自殺したという事例は昔から知られているが、 難しい問題である。 日本語の参考文献
なお、estの項目で挙げた参考文献は、 ここでは紹介していないので、そちらも参照のこと。 |
Copyright 1999 Robert Todd Carroll |
Last Updated 03/10/00(original) 日本語化 03/23/00 翻訳: 小久保温 |