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Robert Todd Carroll

SkepDic 日本語版
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アレイスター・クロウリー Aleister Crowley (1875-1947)

クロウリーは、自他共に認めるヤク中のセックスきちがいで、オカルトに関する多くのほとんど自費出版書籍の著者、詩人、東方騎士団(Ordo Templi Orientis, OTO)というカルトの指導者。このカルトの教義を、クロウリーは多数の著作の一つ『法の書』(邦訳は国書刊行会)で詳しく述べている。この本には、クロウリー版のthe Law of Thelema(テレマの法)が収録されている。クロウリーは、アイワス(Aiwass)という"praeterhuman intelligence"(超人間知性、とでも訳すかね)からこの本をチャネリングされたのだ、と主張している。

「汝の意志するところをなせ。それが法のすべてなり」というのが、OTOのかれのモットーだった。このモットーはクロウリーにとっては、現実には伝統的な道徳律を排除して、ヤク中とろくでもない女たらしの一生を送るという意味だった(かれの詩の一節には「おれは荒れ狂う。強姦し、引き裂き、意のままにする ("I rave; and I rape and I rip and I rend")」なる下りがある。また著書の一つは「ヤク中日記(Diary of a Drug Fiend)」と題されている)。自分を大いなる獣 666 (聖書の黙示録から)と同じだと自称し、「世界でいちばんのろくでなし」なる称号を喜んでいた。妻は二人いたが、二人とも発狂。愛人5人が自殺。マーチン・ガードナーによると、「かれの妾の多くは、アル中、ヤク中となってのたれ死んだか、あるいは精神病院送りになった」 [Gardner, p. 198] しかしながら、クロウリーを清らかな娘たちの美徳破壊者として糾弾してはならない。というのも、かれの魅力というのは、それに惹かれるような女性というのがもともとアル中だったりヤク中だったり、あるいは情緒不安定だったりするような人たちだけ、というような性質のものだったからだ。かれの魅力は、大きく2つあった。まずは、かなりの遺産をもらっていたことと、変人に見られようといっしょうけんめい努力したこと、である。

クロウリーの『魔術:その理論と実践』(Magick in Theory and Practice, 邦訳は国書刊行会)は、オカルト屋の間ではとても人気が高い。Dover社が1990年にこの本を再刊しようとしたとき、ある編集者が、この再版用にマーチン・ガードナーに序文を依頼した。1976年版の『魔術:その理論と実践』は、同社のベストセラーの一冊だった。ガードナーは、すでにその古典Fads and Fallacies in the Name of Scienceの中で、クロウリーはろくでもないインチキ野郎だと書いていたので、かれに序文を頼むというのはかなり意外な選択だ。でもとにかくガードナーは序文を書き、かれの描いたクロウリーの人物像は、実に残酷で、恥ずべき自己中心的な三百代言だったので、Dover社は本そのものの再刊を見合わせることにしてしまった。この序文はガードナーのOn the Wild Sideに収録されている。

クロウリーは意味のある影響力はまったく持っていなかったが、唯一、音楽のレコーディングに逆回しのメッセージ(backwards messages)を普及させた点だけは例外だろう。レッド・ツェッペリンのオカルトがかったギタリストであるジミー・ペイジは、クロウリー関連の記念品をたくさん収集していて、スコットランドのフォイヤーズ近辺にある、旧クロウリー邸だったボレスキン・ハウスを買っている。クロウリーはまた、ビートルズの『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のアルバムカバーに登場する、数多い顔の一人でもある。ジミー・ペイジのようなオカルト屋は、「天国への階段」などに「here's to my sweet Satan」などの逆回しメッセージを使ったといわれている。ビートルズもレコーディングの一部に、逆回しのリフなどを使っているけれど、それは自分たちの悪魔賞賛のためよりは、音楽的な効果ねらいのことなのは明らかだろう。

ガードナー曰く、「クロウリーの評判というのは、サタンを崇拝した人物ということになっているけれど、自分以外の何者をも崇拝しなかった人物という評判のほうが、ずっと正確だろう」

関連項目としてmagickを見よ。

訳者コメント:我が国では、国書刊行会が『法の書』邦訳を出したときにその主要部分に封をして「この封印を破ると6ヶ月以内に天変地異が起こる!」というキャンペーンを張り、それなりに話題を集めた。封印を破ると、というけれど、そんなら印刷した人はどうするんだとか、訳者はいいのか、とか細かいつっこみはなし。出版社側はもちろん、完全に売るための話題づくりだけでやっている。当時、国書刊行会でこの本を企画・担当したのが、いまは日本版クトゥルーとかの作者として有名な朝松建。かれが『イスカーチェリ』28号あたりに、この周辺の事情についてとても詳しい顛末記を書いている。また、日本でクロウリーをはじめこの手のオカルトがらみの話となると、必ず顔を出して仕切りたがっていたのが、武邑光祐という人物。かれと八幡書店の親玉とが、いわば日本のオカルト利権にいかにたかって阿漕なまねをしていたかについても、この顛末記に克明に描かれている。


読者コメント

Gardner, Martin. On the Wild Side (Amherst, N.Y.: Prometheus Books, 1992), chapter 29. $18.87

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 10/30/98
日本語化 01/20/99
翻訳:山形浩生

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