Robert Todd Carroll
SkepDic 日本語版
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満月
full moon
満月は、犯罪や自殺、精神
疾患、災害、出生率や狼男伝説などの原因だといわれている。こうした月の
影響を明らかにしようとして、数多くの研究がなされている。この種の研究
を行なう人々を、ルナ luna(ラテン語の月)を追う人々と言う意味
から、ルナティック(奇人変人)と呼ぶのである。
これまでのところ、こうした研究は興味ある見解を導き出すのには失敗し
ている。もっとも、満月理論がいままでに何人ものルナティックを輩出して
きたという点は明らかだが。満月(あるいはほかの月の状態であっても)と
人間の活動のあいだには、信頼できる相関関係は見出されていない。しかし、
マスメディアは事実と逆の報道をおこなっている。
イヴァン・ケリーらは月の影響にかんする研究を100報以上調査し、以下
のことがらと月のあいだには、有意な相関(つまり偶然では説明できない関
係)は見られなかったと結論づけている:
殺人件数
交通事故
警察や消防への緊急電話
家庭内暴力
出生率
自殺
大規模災害
暗殺
誘拐
プロホッケー選手の暴力行為
囚人暴動
精神医学的な診断事例
家庭内看護での感情的行為
暴力
銃による負傷
痛み
救急医療要請
精神に障害を抱えた成人の衝動的行動
人狼症
吸血鬼伝説
アルコール中毒
夢遊病
てんかん発作
これほど多数の研究でも月との因果関係が示せないのだ。では、多くの人
が月の神話を信じるのは、いったいなぜだろうか?
多くの人が月の神話を信じるのは、マスメディアや警察、看護婦、意志、
ソシアルワーカーなど、影響力のあるさまざまな人達から、この神話を何度
も繰り返して聞かされてきたせいなのだ。いったん多くの人が信じ込んで組織的強化が作用すると、今度は自分に都合のよ
い意見だけを選択するようになるのである。
満月には事故が多いと信じ込むと、満月に起きた事故だけを気にするように
なり、それ以外の日に事故が起きても、関心を持たなくなってしまうのであ
る。このような、満月と事故には関係があるという信念を、あとから強化し
てしまうような傾向は、確証バイアスとし
て知られている。
参考文献
Abell, George. "The Alleged Lunar Effect" in Science
Confronts the Paranormal, edited by Kendrick Frazier. (Buffalo,
N.Y.: Prometheus Books, 1986). $19.16
Abel provides a very critical review of psychiatrist Arnold
L. Lieber's The Lunar Effect: Biological Tides and Human
Emotions.
Hines, Terence. Pseudoscience and the Paranormal
(Buffalo, NY: Prometheus Books, 1990). $19.16
Byrnes, Gail and I.W. Kelly. "Crisis Calls and Lunar Cycles:
A Twenty-Year Review," Psychological Reports, 1992, 71,
779-785.
Kelly, I.W., James Rotton, and Roger Culver. "The Moon was
Full and Nothing Happened: A Review of Studies on the Moon and Human
Behavior and Human Belief," in J. Nickell, B. Karr and
T. Genoni, eds., The Outer Edge (Amherst, N.Y.: CSICOP, 1996).
This is an updated version of an article which originally appeared in
the Skeptical Inquirer Winter 1985-86 (vol. 10, no. 2) and was
reprinted in The Hundreth Monkey and Other Paradigms of the
Paranormal, edited by Kendrick Frazier (Buffalo, N.Y.:
Prometheus Books, 1991), pp. 222-234. $18.36
Martin, S.J., I.W. Kelly and D.H. Saklofske. "Suicide and
Lunar Cycles: A Critical Review over 28 Years," Psychological
Reports, 1992, 71, 787-795.
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