選択的思考 selective thinking
選択的思考とは、望ましい証拠だけを取り出して論じる一方で、仮説にとって望ましくない証拠は無視するプロセスである。こうした思考様式は、読心術とよばれる超能力を信奉する基礎になっている。また、オカルトや占星術、ESP、筆相学、精霊との交感などを信奉する大きな原因にもなっている。
ジェームズ・ランディは、選択的思考について、以下のような例をあげている。ピーター・ハークスは、見ず知らずの人の家や生活を、まるで見てきたように詳細に描写できて、会う人々を驚かせていた。ハークスに心を読んでもらって描写の正確さに驚いたある二人が、ランディに招かれて読心術を収録したビデオを見た。``実際に数えてみると、くだんの超能力者ハークスが正しい答を返したのは、平均して質問40個につき1回だけだとわかった。選択的思考のせいで、彼らは完全な誤答や、明らかに間違った推量についてはまったく憶えておらず、``正しく''言い当てられた場合だけを憶えていたのだ。彼らはハークスが正真正銘の超能力者であってほしいと願うビリーバーで、この実験の結果にもかかわらず、いまだにこのイカサマ師の熱烈なファンである''(Flim-Flam! 7)。
選択的思考は、ないものねだり とは別個にはたらく。また、先入観つきの思考と混同しないようにすべきである。このことは明記しておく必要があるだろう。このため、ある人は自身の信条とは逆のデータを真面目に検討するが、べつの人はこうしたデータを、自分の信仰にしたがうデータより批判的に扱ったりする。
関連する項目:その場しのぎ仮説 (ad hoc hypothesis)、コールド・リーディング (cold reading)、組織的強化 (communal reinforcement)、確証バイアス (confirmation bias)、対照研究 (control study)、オッカムの剃刀 (Occam's razor)、プラシーボ効果 (the placebo effect)、因果の誤り (the post hoc fallacy)、自己欺瞞 (self-deception)、主観的な評価 (subjective validation)、証言 (testimonials)、ないものねだり (wishful thinking)。
参考文献
Gilovich, Thomas. How We Know What Isn't' So: The Fallibility of Human Reason in Everyday Life (New York: The Free Press, 1993) $12.76
トマス・ギロビッチ,人間 この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか.守一雄・守秀子 訳.新曜社.
Randi, James. Flim-Flam! (Buffalo, New York: Prometheus Books,1982). $15.16
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