心、意識
mind
心は、知覚や自意識や、思考、信念、記憶、希望、欲望、意志、判断、分析、検討、動機づけなどの担体と考えられている。
二元論者は、心を物理的な肉体とはまったく独立して存在して意識や知覚することができる非-物質的実在だと考えている。二元論は、死後の生まれかわりを信奉する人々に人気がある。頭脳は亡び消滅するが、心(あるいは魂)は肉体とは独立して存在するので、別の世界で発展し続ける,というわけである。このような、心が脳とは別に存在するという信仰は信じ難いものだが、ニューエイジの理論や療法と同様に、ほとんどの宗教で教義上必要なものとなっている。二元論の見地に立つ哲学者は、いわゆる心と身体の問題で大論争を繰り返してきた。一方、ニューエイジのグルたちは医療や 癒し(セラピー)、あるいは科学における心と身体の調和を唱えている。つまり、哲学者たちは本質的に相異なる実在がどのように相互作用を及ぼすのか、それが問題だと自覚しているのにたいして、ニューエイジの賢者たちは、あたかもこの2つ--心と身体--が相互作用しないかのように扱うことが問題の原因だと考えている。
これとは逆に、形而上学的唯物論者は心を脳そのものか、あるいは創出された実在(emergent reality, 脳から生じているが脳そのものとは分離している存在)だと考えている。後者の教義はepiphenomealismとして知られている。唯物論者にとって、`心'は大量のプロセスや活動を総称するのに用いる語である。これらのプロセスは、脳科学的、神経学的、生理学的プロセスに還元しうる。
行動主義者は`心'を、一連の行動を総称する語と考えている。
哲学や神経学においては、およそ心や意識ほど魅力的な問題は、たぶん他にないだろう。人間の心が世界や自分自身を解明してきたのは事実だが、しかし、そうした理解の作業は、心そのものを解明するのには、ほとんど何の手助けにもならなかった。たとえば、記憶は誰でも多かれ少なかれ持っているものだが、それでも私たちは記憶というものを、十分に理解しているとはいえないし、諸説があっても、すべて信頼するに値しないものばかりではないか。
心や意識にかんする言説は、最高の哲学者や科学者たちの頭脳を支配し続けている。人間の心を理解する鍵が脳機能の研究にあるのは事実だが、それにもかかわらず、哲学者や心理学者の多くは、心は脳とは別ものとして扱って充分に理解することができるという信念に頼っている。
哲学者たちは、心とはいったい何かを、充分に説明できていない。しかし少なくとも、心が肉体を離れて実在しうると証明するには問題が多い、とする説を受け入れる程度には謙虚な姿勢を示している。おそらく、彼らは肉体を離れた心が存在するとしても、あるいは存在しないとしても、それを自分自身の心を用いて証明しようとしているのだろう。どちらが正しいか、それは誰にもわからないのだ。これは心を捉える心の問題(the mind leading the mind problem)、とでも呼べるかもしれない。
See related entries on アストラル・プロジェクション(astral projection)、二元論(dualism)、自由意志(free will)、唯物論(materialism)、記憶(memory)、魂(souls)、チャールズ・タート(Charles Tart)、哲学的ゾンビ(p-zombies)。
further reading
Churchland, Patricia Smith. Neurophilosophy - Toward a Unified Science of the Mind-Brain (Cambridge, Mass.: MIT Press, 1986).
Damasio, Antonio R. Descartes' Error: Emotion, Reason, and the Human Brain (Avon Books, 1995).$10.80
Dennett, Daniel Clement. Brainstorms: Philosophical Essays on Mind and Psychology (Montgomery, Vt.: Bradford Books, 1978).
Dennett, Daniel Clement. Consciousness explained illustrated by Paul Weiner (Boston : Little, Brown and Co., 1991).
Dennett, Daniel Clement. Darwin's dangerous idea: evolution and the meanings of life (New York : Simon & Schuster, 1995). $12.80
Dennett, Daniel Clement. Kinds of minds: toward an understanding of consciousness (New York, N.Y. : Basic Books, 1996). $8.80
Dennett, Daniel Clement. Elbow room: the varieties of free will worth wanting (Cambridge, Mass. : MIT Press, 1984). $14.95
Hofstadter, Douglas R. and Daniel C. Dennett The mind's I: fantasies and reflections on self and soul (New York : Basic Books, 1981). $14.36
Hofstadter, Douglas. Metamagical Themas: Questing for the Essence of Mind and Pattern (New York: Basic Books, 1985). See especially chapter 5, "World Views in Collision: The Skeptical Inquirer versus the National Enquirer". $18.40
Ryle, Gilbert. The Concept of Mind (New York: Barnes and Noble: 1949). $12.95
Sacks, Oliver W. An anthropologist on Mars : seven paradoxical tales (New York : Knopf, 1995). $10.40
Sacks, Oliver W. The man who mistook his wife for a hat and other clinical tales (New York : Summit Books, 1985). $10.40
Sacks, Oliver W. A leg to stand on (New York : Summit Books, 1984). $10.00
Sacks, Oliver W. Seeing voices : a journey into the world of the deaf (Berkeley: University of California Press, 1989). $8.80
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