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Robert Todd Carroll

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アイリドロジー、虹彩診断、虹彩学
iridology

eyball.jpg (17855 bytes)アイリドロジーは病気の診断を目的とする眼の虹彩の研究である。アイリドロジーは、人の身体器官はすべて虹彩の中の然るべき位置に対応する部分を持っており、器官を直接調べなくても虹彩を調べることによって、健康かそれとも病気を抱えているかどうかは診断できる、という怪しげな仮定にもとづいている。アイリドロジーは正統な医師ではなく、ナチュロパシー治療師カイロプラクティシャンホメオパシー治療師鍼治療師が実践する場合が多い。

正統な外科医は虹彩を眼の一部であり入射する光の量を調節しているとみなしている。虹彩は眼の色のついた部分で、中央には瞳孔という収縮性の孔が開いている。瞳孔は焦点を合わせる役割を果たすレンズに光をもたらす。レンズによって焦点を合わせられた光は網膜上の桿状体と錐状体を照らし、これによって画像が形成される。桿状細胞と錐状細胞は視神経を刺激し、視覚イメージは視神経によって脳へと送られる。正統な外科医は、目に見えない病気の兆候のうち特定のものは眼診でわかるということも認めている。イリスとはもともと虹を擬人化した古代ギリシア神のことだということも知っていたりするし、あるいはこの話を聞いて驚いたりもする。

アイリドロジーは19世紀ハンガリーの外科医イグナッツ・ヴォン・ペッチェリーが発明したものだ。ペッチェリーは、彼が骨折を治療していた男の眼とペッチェリーが数年前に足を折ってしまったフクロウの眼が互いに似ていたところから、このすばらしい診断ツールの着想を得たのだ。その類似点は暗い筋模様で構成されていた。探求が始まった。ペッチェリーは彼の患者の眼の模様に見られる類似性と病気について記録を取り始めた。その他の賢人たちは眼のマッピングを完成させた。その地図は眼を時計の文字版に見立てていくつもの部位に分けたものだった。そういうわけで、たとえば患者の甲状腺の状態を知りたい場合にも、触診をおこなって甲状腺の肥大具合をみる必要はないというわけだ。臓器そのものの検診すら必要ない。右眼の虹彩をのぞき込んでおよそ2時半の位置を調べ、そして左目の虹彩をのぞいておよそ9時半の位置を調べれば良いのだ。つまり、もし甲状腺の状態を調べたければ、あなたは眼のこれらの位置に退色や斑紋、縞が見られるかどうかだけを調べればよいというのだ。ヴァギナやペニスの疾患の場合は右目の5時の位置を調べたらよい。こういった具合だ。アイリドロジストは、アイリドロジーの地図と虫眼鏡と電灯がなければ、何も調べることができない。

アイリドロジーには何らかの科学的裏付けがあるのだろうか?ない。では、これほど多くの人がこれを信じてしまうのは、いったいなぜなのだろうか?もしヴォン・ペッチェリーの説明が典型的なものであるなら、彼やその他のアイリドロジストは眼に現れるしるしと病気の間の関連性を探し求めて見いだしてしまうことによって、自己欺瞞に陥っているのだろうと推測することができる。彼らは``しるし''と``病気''を扱っているが、これらはともにあいまいなものだ。多くの場合、病気は精密かつ性格に診断できるものではない。アイリドロジストたちは、実際には対照研究で厳密に確かめられたわけではない多くの因果関係によって、アイリドロジーを有効だとしてしまうことができるのである。彼らのいう因果関係の中には正確なものもあるかもしれないが、多くはまちがいなくあいまいなものだ。というのも、``しるし''と``病気''をいちじるしく拡大して解釈するからだ。彼らは、実際にはパターンなどないところにパターンを見いだしてしまったりした。彼らはデータを誤って解釈し、反証を無視したり考慮の外におく一方で、現実離れした有意性を検証にたいして与えてしまったりする。彼らの検証の多くは、自己評価にすぎない。患者の病気にたいして暗示の力がどの程度働いていたのか知る方法は、私たちにはない。多くの症状はおそらく間違ったものだったのだろうが、診断が有効かどうか確かめるために客観的な検証がおこなわれたことはなかった。診断の中には正しいものもあるかもしれないが、アイリドロジストは眼のしるし以外のサインを使って診断しているのかもしれない。彼らがおこなわないのは、明確に設定されて対照条件・二重盲検法・無作為化・反復化した公開研究である。もし彼らが自身の主張について科学的な検証をおこなっていたら、アイリドロジーが有効か無効か、一度で決着をつけることができたのだが。厳密な科学的検証がないために自己欺瞞に陥ってしまっているものとしては、この分野では他にもリフレクソロジー耳鍼治療がある。

このように書いてはいるが、眼の状態は眼以外の疾患に対する診断ツールとして不適切だなどと仮定しているわけではない。病気の症状を眼を見て診断するからといって、これがすぐさまアイリドロジーだというわけではないのだ。アイリドロジーはこうした主張のはるか上をいっていて、眼には各器官に対応する部分があって、器官の状態は眼の特定の位置を調べればわかると唱えているのだ。眼科医や検眼士は、眼を診断して眼以外の健康問題をも同定することができるが、もし問題がありそうだとなったら、こうした医者たちは、より詳細な検査を受けさせるために患者を然るべき専門医に紹介してくれる、

一方、虹彩にはたいへん奇妙な特徴もある。虹彩は人によってすべてまったく違っているので、虹彩は指紋より優れた個人識別器となるのだ。その一方で、それぞれ身体器官の状態が変化しても虹彩は変化する。このことは虹彩を不変かつ常に変化するものにしている。まるでパルメニデスとヘラクリトスの世界が神秘の合一を遂げたようである。

関連する項目:鍼治療 (acupuncture)その場しのぎの仮説 (ad hoc hypothesis)代替療法 (alternative health practices)コールド・リーディング (cold reading)組織的強化 (communal reinforcement)確証バイアス (confirmation bias)対照研究 (control study)オッカムの剃刀 (Occam's razor)病的科学 (pathological science)プラシーボ効果 (the placebo effect)因果の誤り (the post hoc fallacy)リフレクソロジー (reflexology)選択的思考 (selective thinking)主観的な評価 (subjective validation)証言 (testimonials)ないものねだり (wishful thinking)



参考文献

読者のコメント

Barrett, Stephen and William T. Jarvis. eds. The Health Robbers: A Close Look at Quackery in America, (Amherst, N.Y.: Prometheus Books, 1993). $18.87

Frazier, Kendrick. editor "Iridology: Diagnosis Or Delusion?" in Science Confronts the Paranormal (Buffalo, N.Y.: Prometheus Books, 1986). $19.16

Gilovich, Thomas. How We Know What Isn't So: The Fallibility of Human Reason in Everyday Life (New York: The Free Press, 1993) $12.76

Hines, Terence. "Iridology," in Pseudoscience and the Paranormal (Buffalo, NY: Prometheus Books, 1990). $23.95

Gardner, Martin. "Medical Cults/Quacks," in Fads and Fallacies in the Name of Science (New York: Dover Publications, Inc., 1957). $6.36

Raso, Jack. "Alternative" Healthcare: A Comprehensive Guide (Amherst, NY: Prometheus Books, 1994).$19.57

Worrall, Russell S. "Iridology: Diagnosis or Delusion?" in Science Confronts the Paranormal, edited by Kendrick Frazier. (Buffalo, N.Y.: Prometheus Books,1986). $19.16

Copyright 1998
Robert Todd Carroll
Last Updated 11/19/98
日本語化 04/17/00

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